ICT活用事例

「本物の出会い栃木」を支える多言語コールセンター~外国人観光客の宿泊滞在増加をめざす!~

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東照宮でおなじみの日光や、藤棚で有名なあしかがフラワーパーク、宇都宮や那須高原など、栃木県は数多くの名所旧跡を有する観光都市です。これらの観光地で、近年、急増しているのが、外国人の観光客。観光地だけでなく、周辺の駅や店舗でも外国語が飛び交うようになってきました。栃木県は「増えつつある外国人観光客の心を掴み、より力強くインバウンドを推進したい」と考え、「多言語コールセンター」を導入。これは、英語や中国語をはじめとする10言語に対応するオペレーターが、電話通訳などを行うコールセンターサービスです。多言語コールセンターで得たデータを蓄積・活用すれば、新たな観光サービスを生み出したり、観光と交通を結びつけたりと、スマートシティ構想へつなげることも可能です。また、コールセンターの運営や関連する事務作業をアウトソースすることで、職員の負担を増やすことなく新サービスを軌道に乗せています。サービス導入の経緯、選定のポイント、効果などを栃木県庁の担当者にお聞きしました。

栃木県

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(左から順に)NTT東日本-関信越 栃木支店 ビジネスイノベーション部 第一バリュークリエイトグループ バリュークリエイト担当 住岡直樹氏、栃木県 産業労働観光部 観光交流課 観光地づくり担当 主査 丹野佳奈氏、栃木県 産業労働観光部 観光交流課 課長 手塚章郎氏、栃木県 産業労働観光部 観光交流課観光地づくり担当 副主幹 垂石彰氏、NTT東日本-関信越 栃木支店 ビジネスイノベーション部 第一バリュークリエイトグループ 担当課長 平沼邦光氏

導入いただいたソリューション

多言語コールセンター導入・運用支援

ソリューション導入効果

  • 半年で240社が登録、外国人対応のニーズに応える体制整備ができた
  • 外国人観光客だけでなく観光関連施設で働くスタッフのコミュニケーションストレスを軽減する環境が整った
  • 医療機関や交通機関なども含め利用登録が促され、県全体で外国人の受け入れが進んだ

NTT東日本ー関信越の選定ポイント

  • テレビ電話通訳やAIを活用した精度の高い翻訳サービスなど、技術力を活かした+αの提案があったこと
  • 県内観光施設で使われる通訳翻訳サービスであるという性質上、栃木県のことをよく知る「地域密着型」の事業者であること
  • 事業成功のため県と一体になり、広くサービスを周知展開できる高い事業推進力を持ち合わせていること

課題は日帰り、“宿泊し滞在する外国人観光客”を増やしたい

――まずは栃木県のインバウンドの現状をお聞かせください。

手塚氏:平成30年度に栃木県に宿泊した外国人観光客は22万3,000人でした。もっとも多かったのが台湾からで、5万2,000人に宿泊いただいています。2位は中国で3万3,000人、3位はアメリカで1万9,000人でした。このデータは、あくまで、「県内の旅館やホテルに宿泊した外国人の数」でしかありません。日帰りなどを含めると、もっと大きな数字になると考えています。

これほど多くの外国人観光客にお越しいただけているのは、“外国人にとって魅力的な観光地が多いから”だと考えています。日光は寺社仏閣の文化がない欧米の方から人気が高く、あしかがフラワーパークは自然を好むアジア圏の方が多く訪れています。最近は奥日光や鬼怒川温泉や宇都宮なども人気です。

――豊富な観光資源があり、そこに外国人のお客さまを誘導できている状況なのですね。では、インバウンドを推し進める際の課題はなんでしょうか? 

手塚氏:もっとも大きな課題は「日帰り客が多いところ」です。東京から電車で1時間程度の立地のため、宿泊が不要なケースも多いためです。この数年、外国人観光客の増加率が停滞していることも懸念です。宿泊施設などのキャパシティーから見ると、栃木県はまだ観光客を受け入れる余力がある状況です。

受け皿はありますので、いかにして観光客に快適な環境をつくり、宿泊して滞在を楽しんでいただくか――。ここにしっかり向き合い対策をしていかなければならないと考えています。

栃木県 産業労働観光部
観光交流課 課長 手塚章郎氏

徹底したPR活動で「多言語コールセンター」を周知

――2019年7月に、10カ国語の通訳・翻訳を行う「多言語コールセンター」サービスの運営を開始されました。導入の狙いを教えてください。

手塚氏:国の調査によると、外国人観光客の大きなストレスは「言葉が通じないこと」だとわかっています。このストレスを解消し、気持ちよく滞在できる環境をつくらねばならないと、導入を決めました。

――導入事業者はプロポーザルで決定したとお聞きしています。NTT東日本-関信越を選定した決め手はどこにあったのでしょうか?

手塚氏:NTT東日本-関信越は、宇都宮市に拠点をもつ地域密着型の企業で、栃木県の事情や企業などにも精通していたことが決め手でした。提案の内容に、電話通訳だけでなくテレビ電話による通訳や、ニューラル機械翻訳(NMT)技術(※)を活用したAI翻訳ツール「COTOHA®Translator」を使った精度の高い翻訳サービスが含まれていたところもポイントでした。私たちが希望していたのは電話通訳と簡易翻訳だけだったので、+αの提案はありがたかったです。

※ニューラル機械翻訳(NMT)技術:ディープラーニング(深層学習)を利用した翻訳技術。従来の機械翻訳に比べ精度が高く、流暢で自然な訳文が生成できる
※COTOHA®Translatorは、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社の提供するサービスであり、登録商標です。

――運用開始に向けた準備期間はどんなことをされたのでしょうか?

垂石氏:コールセンターのスタッフや環境などはNTTグループ側ですでに有していましたので、設備について私たちがなにかを準備する必要はありませんでした。テレビ電話は、スマホやタブレットで専用サイトにアクセスすればすぐに使えるようになっていましたし、翻訳サービスも、依頼して中1日で翻訳文が返ってくるというスピーディーさ。実際に使ってみて、NTTグループの技術力の高さを感じました。

その他、注力したのはPRです。「多言語コールセンター」というサービスを始めることや、その内容、登録の仕方などを、県内の宿泊施設や飲食店などに向けて、徹底的に周知していきました。

まずは案内状を送付し、合わせてセミナーでの宣伝も行いました。インバウンドの先進事例を紹介する県主催のインバウンドセミナーで告知をしたり、NTTグループのセミナーも利用しました。特に印象深いのが、NTT東日本-関信越 栃木支店の担当者が、直接、施設や企業を回ってPRをしてくれたこと。日頃の営業活動を通じた強力なリレーションがあり、これによって登録を決めた施設や企業も少なくなかったと聞いています。

こうした活動は、NTT東日本ー関信越だったからこそできたことだと考えています。地元にどんな観光資源や企業があり、いつどんな風にアプローチすればよいかなどを把握しており、周知の提案やアドバイス、進捗の報告などをFace to Faceで相談できたことも助かりました。県と彼らとの連携によってサービスの開始前に一定の周知ができたのだと思います。

栃木県 産業労働観光部
観光交流課 副主幹 垂石彰氏

※多言語コールセンターはNTTグループのリソースを活用しています。
※電話通訳サービス、TV電話通訳サービス、簡易翻訳サービス(全日24時間対応:英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語、全日9~18時対応:タイ語、全日10~18時対応:ネパール語、全日10~19時対応:ベトナム語・フランス語・タガログ語/以上10言語に対応)

 

高い応答率でストレスフリー

――運用開始から半年が経過しました。活用の状況をお教えください。

手塚氏:現在、240の施設が利用登録をしています。これは、先行して類似のコールセンターを運用しているほかの自治体の登録数を上回る数です。予想を超える施設に受け入れられ、いまのところ順調な滑り出しと考えています。

登録施設のなかには、日光東照宮、日光金谷ホテル、江戸ワンダーランド日光江戸村をはじめとする、有名施設や大手企業も含まれています。こうした施設が登録している理由は、10カ国語の通訳が可能であることだと思います。英語、中国語、韓国語はまだしも、ベトナム語、ネパール語、タガログ語などを話せるスタッフはそれほど多くはないでしょう。これらの言語を話す観光客にも対応ができるよう、いわば保険のような意味合いで登録されているのではないかと思っています。

それから、医療機関の登録も9つありました。それだけ外国人の受診者が増えているということで、観光以外の部分でも活用されています。もちろん、街の土産物屋や飲食店などにも登録いただいています。

丹野氏:通訳サービスの利用が多いのは、やはり旅館やホテルです。外国人のお客さまから観光地の紹介を求められたり、行き方を聞かれたりするケースが多いようです。

翻訳サービスは、飲食店でメニューを多言語化する際などによく使われています。ユニークなケースでは、釣った魚を持ち込むと塩焼きにしてくれる店舗が、頻繁にタイ語での翻訳を依頼しています。詳しく伺うと、タイからの観光客を呼び込むためにSNSでタイ語で情報発信をしているとのことでした。また、県庁の自然環境課では「熊に注意!」という文章を5カ国語に翻訳しています。翻訳された文章は、Webサイトや観光案内所で配布されるチラシなどに掲載されています。

栃木県 産業労働観光部
観光交流課 観光地づくり担当 主査 丹野佳奈氏

運用から約半年、「つながらない」などコールセンターへのクレームは1件もありません。リピート利用も増えています。

垂石氏:多言語コールセンターは、インバウンドにおけるセーフティネットだと考えています。店舗や施設のスタッフは、登録するだけでコミュニケーションの壁がなくなり、外国人観光客に対して及び腰にならず対応できるようになります。

手塚氏:登録者数がじわじわと増えて、外国人観光客にとってストレスフリーな環境が完成し、「宿泊したい、リピートしたい」「栃木県を人にすすめたい」という外国人観光客が増えてほしいです。今後も登録者数の増加をめざして、地道に周知を進めていく考えです。

多言語コールセンターに登録した施設に貼られているステッカー
栃木県の観光と県産品の情報館「おいでよ!とちぎ館」にもステッカーが貼られている。写真に写っているのは左から店舗スタッフ2名と、栃木県の魅力をPRしている「とちぎおもてなしメイツ」2名

また、多言語コールセンターの導入をきっかけにして、さまざまな県内施設から、「Wi-Fiを整備したい」「キャッシュレス化を進めたい」との声があがったと聞きました。現在、NTT東日本ー関信越が積極的に導入支援を行っているそうで、本コールセンター事業をきっかけに、外国人観光客に対する、より一層の受け入れ態勢の強化が進んでいると感じています。

※上記ソリューション導入時期は2019年7月です。
※文中に記載の組織名・所属・肩書・取材内容などは、すべて2019年12月時点(インタビュー時点)のものです。
※上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。

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組織名 栃木県
組織概要 栃木県は、関東平野の北部に位置し、緑なす山々と広い平野、日光国立公園、ラムサール条約に登録されている奥日光の湿原や渡良瀬遊水地など豊かな自然に恵まれ、穏やかで暮らしやすい、住む人にも訪れる人にも「健康」と「やすらぎ」を与えることのできる県です。また、世界遺産に登録された日光の二社一寺や、日本最古の総合大学といわれる足利学校、ギネスブックに登録されている日光杉並木街道など、深い歴史と文化を有し、産業面においては、広大な農地や良質で豊かな水を基に農業や畜産業が盛んである一方、大手企業や技術力の高い中小企業が集積する「ものづくり県」でもあるなど、各産業がバランスよく発展し、豊かな県民生活を築いています。
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