スマートシティ技術の“いま”(第2回)

スマートシティで実現する防災・減災

posted by 岩元 直久

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 IoT、AI(人工知能)、ロボット、ビッグデータ…。こうしたICTの進展は、産業界だけでなく“まちづくり”の分野にも大きな影響を与えます。エネルギー、公共交通、社会インフラの維持管理、災害対策、住民の働き方改革まで、ICTによって地域の新しい価値創出や社会コスト低減が期待できる分野が広がっているのです。

ICTの進化がスマートシティの範囲を拡大

 日本政府は、経済発展と社会的課題の解決を両立していく新しい社会「Society 5.0」(超スマート社会)を、めざすべき未来社会の姿として提唱しています。超スマート社会をまちづくり分野で具体化させる重要なキーワードが「スマートシティ」です。

 スマートシティ実現への取り組みは、2010年頃から国内外で進められてきました。ただ、これまでスマートシティへの取り組みでは、再生可能エネルギーの活用、エネルギーマネジメントシステム(EMS)、スマートグリッドなど、エネルギー分野が目立ちました。いうなれば、「分野特化型」スマートシティの取り組みだったのです。

 ところが、最近ではSociety 5.0の考え方に基づいたICT・データ利活用型スマートシティへの取り組みが注目されるようになってきました。ICT・データ利活用型スマートシティでは、複数の分野に幅広く取り組む「分野横断型」スマートシティの取り組みが増えています。環境、エネルギー、交通、通信、教育、医療、防災・減災など、多くの社会課題に関して、横断的にICTでの解決をめざすのです。

各地で広がる防災・減災へのICT利活用

 すでに全国各地の自治体が、ICTを使った防災・減災に取り組み始めています。例えば、降雨量の情報を365日24時間収集し、AIで分析して今後の河川氾濫(はんらん)予測をする。職員が直接監視できないような河川上流の水位を遠隔カメラで把握して、洪水や冠水などを予測し的確な避難指示につなげる。崖などに位置情報の測定がおこなえるセンサーを埋め込み、地盤の動きをいち早くキャッチして、土砂災害や崖崩れの予兆を見つけて、住民に避難を呼びかける。こういった取り組みにより、人手をかけずに、安心・安全を守る自治体が増えています。

 内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省は、スマートシティの幅広い取り組みを官民連携で加速するため、企業、大学・研究機関、地方公共団体、関係府省などを会員とした「スマートシティ官民連携プラットフォーム」を設立しています。同プラットフォームのウェブサイトには、さまざまな分野のスマートシティに関する取り組みが掲載されています。ここでは、自治体の防災・減災の取り組みをいくつか紹介しましょう。

 静岡県では、熱海市と下田市を舞台に、三次元スキャナーなどを用いて道路、河川などのインフラ施設のデータを作成。経年の変化を把握することで維持管理に活用したり、災害時には、速やかな情報把握と復旧活動に活用したりしようとしています。

 横浜市はみなとみらい21地区において、人の流れをデータ化し、それを災害発生時における効果的な避難誘導などの情報発信に活用することに挑戦しています。具体的には、デジタルサイネージを活用した緊急情報の発信や、被災状況や負傷者搬送を俯瞰する「災害ダッシュボード」の活用といった取り組みです。

 東京都江東区の豊洲エリアでは、AI(人工知能)を活用した防災強化に取り組んでいます。当該地区の住民からの情報や画像データをSNSで収集する防災情報発信サービスを構築。そのデータをAIで解析して迅速な状況把握や危機分析を行い、「AI防災訓練」を住民参加型で実施するというものです。

防災・減災を支えるインフラからスマートシティを考える

 ICT・データ利活用型スマートシティでは、多様なIoTデバイスをいろいろな場所に実装し、そこから得られるデータを利活用できるようにすることが不可欠です。センサーやカメラなどのIoTデバイスを地域に数多く設置し、情報をリアルタイムに収集、分析するための通信インフラやAIを備えたクラウドを用意するといった、情報基盤の整備が求められるのです。

 つまり、スマートシティのソリューションには、IoTデバイスやクラウド、AI、ネットワークなど、さまざまな構成要素が必要になります。これらを最適に組み合わせてソリューションをトータルで構築できること、運用が始まってからの保守や変化への対応を迅速かつ的確に行えることなどが、安心・安全なスマートシティを実現するためのパートナーに求められます。

 地域はそれぞれ多様性を持っているため、その課題も多岐にわたります。画一的な対策では、すべての課題解決は難しいので、最終的には個別に最適なソリューションを探る必要があります。防災・減災のためのスマートシティを検討する地域にとっては、個別事情に合わせた課題解決に寄り添って、ゴールの姿をともに考えてくれるソリューションベンダーを選択することが、重要なポイントになるでしょう。

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岩元 直久

岩元 直久

日経BP社でIT、ネットワーク、パソコンなどの分野の雑誌、ウェブ媒体の記者、デスクを歴任。モバイル分野については、黎明期から取材・執筆を続けている。フリーランスとして独立後は、モバイル、ネットワークなどITを中心に取材・執筆を行う。

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