企業のデジタルシフト(第11回)

成長率34%、オンライン接客市場に小売業が注目

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 接客を伴うサービスが苦境に立たされているなか、打開策として小売業をはじめとする各企業が続々と導入を進めているのが、オンラインで行う接客サービスです。With/After コロナ時代のスタンダードとなり得る「オンライン接客」を活用し、新しいビジネスに挑む小売業の事例を紹介します。

オンライン接客のトレンドは“チャット”と“動画”

 オンライン接客は、新型コロナウイルスが流行する前からユーザー利便性の向上や働き方改革の一環として活用されていました。その主流を占めていたのが、ユーザーからの問い合わせに自動で応対するチャットボットでした。

 ところが来店客が減少したWith/After コロナの社会では、店舗の店員やコンシェルジュがチャット対応を行う「チャット接客」の事例が増えています。さらに、実店舗で店員やコンシェルジュがライブ動画配信サービスやウェブ会議システムを活用し、視聴者への接客を行う「動画接客」も台頭しています。

 コロナ禍で減少した売上を立て直す施策として、各業界で盛り上がりを見せるチャット接客と動画接客。その中でも積極的に導入が進められている小売業の事例をいくつか見てみましょう。

「チャット接客」で、店舗スタッフの接客技術をフル活用

 店舗スタッフの接客スキルをオンラインに生かしているのが、アウトドア用品メーカーの株式会社スノーピークです。同社は2020年5月から、チャットでユーザーの買い物をサポートするサービスを開始しました。経験豊富なスタッフが質問や相談にきめ細かく対応するなど、ユーザーは実店舗と同じような接客を受けることができます。ECサイトは商品に触れることができないため、商品説明文や口コミなどもとに検討する方法が主流です。チャット接客であれば商品説明文や口コミでは調べ切れない情報もチャットで聞けるため、ユーザーの利便性はより高まったといえるでしょう。

 チャットボットと有人チャットの組み合わせに成功しているのが、アパレルブランドの株式会社ナノ・ユニバースです。2017年にAIチャットボット「nano-bot」を導入し、ユーザーからの問い合わせに自動応答できるようにしました。さらにウェブ接客ツール「KARTE」を導入し、ユーザーのサイト上の行動データをスコアリング。購買意欲が高いユーザーに対してスタイリストとのチャットに誘導する機能を備えました。この施策によりCVRが107%上昇したそうです。

社長がみずから接客も。自由度が高い「動画接客」

 動画やウェブ会議システムを活用した動画接客の導入が、実店舗を有する企業で活発に進められています。三越伊勢丹は2020年6月から「おうち de 伊勢丹」をテーマにしたオンライン接客をトライアルスタート。Zoomを利用して、伊勢丹新宿店のランドセル売り場の販売員による約40分の接客が受けられます。ユーザーの需要にいち早く応えるためにZoomを採用しましたが、今後は自社アプリからオンライン接客ができるように対応していくそうです。

 池尻大橋に店舗を構えるアパレルブランド、ALL YOURSの「プライベートzoom接客」では、代表の木村まさし氏がユーザーと一対一でテレビ電話を行い、ユーザーの好みやライフスタイルをくみ取って商品を提案します。社長と直接話ができる機会は、それだけでユーザーにとっては貴重なもの。小規模企業や個人商店が参考にしやすい事例です。

 日本通運株式会社が2020年7月より開始したのが、リモート見積もりサービス「リモミ」です。引越しの見積もりはユーザー宅へ訪問して行うのが主流でしたが、2LDKまでの住まいを対象に、スマートフォンやタブレット端末で訪問時と同等の見積りがリモートで可能になるサービスです。ユーザーは日通LINE公式アカウントからリモミに接続し、カメラ機能を使って部屋を撮影するだけ。日程調整や見積もり提出の手続きも迅速になるため、ユーザー利便性が大きく向上するサービスだと考えられます。

急成長中のオンライン接客市場に、売上アップのチャンスがある

 ITコンサルティング・調査を手がける株式会社アイ・ティ・アールは、2018年に実施した調査で、オンライン接客市場の2016〜2021年度におけるCAGR(年平均成長率)は34.6%と、著しい成長を予測しました。これは新型コロナウイルスが流行する前の調査なので、実際の成長率はこの予測をさらに上回る可能性があります。

 既存のツールでも手軽に始めることができて、小規模事業者や個人商店も導入しやすいのがオンライン接客の魅力。これまでの常識や商習慣にとらわれずにチャレンジすることが、コロナショックをチャンスに変えるカギとなるでしょう。

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