2016.10.6 (Thu)

理想的な会社の在り方とは(第3回)

部下に好かれる上司は無能?シビアな内容の本に学ぶ

posted by 高島 ちなみ

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 ダン・S・ケネディという人物をご存知でしょうか? アメリカ出身のマーケティング・コンサルタントで、多くのビジネス書を世に送り出している人物です。

 彼の著書の特徴は、内容がとにかく「シビア」なこと。たとえば2011年に発売された『ダン・S・ケネディの世界一シビアな「社長力」養成講座』(ダイレクト出版刊)では、「従業員が辞めても気にしない」「公平性などくそくらえ」「部下に好かれる上司は無能」など、驚くような強烈なフレーズばかりが並んでいます。

 しかし、そうした強烈な言葉を並べる裏には、ダンが考える「あるべきリーダー像」が見え隠れします。今回は、『世界一シビアな「社長力」養成講座』の中に散りばめられた、厳しい言葉の裏にある本当の意味を探ってみます。

部下に好かれる上司は「無能」の代名詞

 本書の中でも、特に強烈なフレーズが「部下に好かれる上司は『無能』の代名詞」です。おそらく多くの人が「いや、部下に慕われる上司こそ、理想のリーダーではないのか」と反論することでしょう。

 しかし、ダンは「従業員に好かれる経営者が、会社のためにより高い生産性とより多くの利益を生み出すということを証明するものはまったくない」と言い切っています。たしかに、「人望のある人」イコール「有能な人」とは言いきれません。

 ダンは「従業員を放っておけば、必ずサボる人間が出てくる」とし、マネジメントする立場の人間には、「情け容赦ない態度」が不可欠であると断言しています。さらに、「できない従業員」は解雇すべきで、雇い続ける責任はこれっぽっちもない、とのことです。情け深い態度で部下から信頼されているリーダーも、ダンに言わせれば、社員の怠慢を許す怠慢なリーダーでしかないのです。

コストを回収しない従業員は即解雇

 ダンは本書にて、「不要な人材に情けをかけてはならない」と強く語っています。しかし、何をもって「不要な人材」と判断するのでしょうか。

 その答えのヒントになるのが、本書で説明されている「従業員ひとりにかかるコストの計算方法」です。

 従業員のコストというと、賃金や税金、各種手当てや経費などを思い浮かべるかもしれませんが、ダン氏はこの上に、休暇、辞めていく人員の補てん費用、従業員の過失によって生まれる「ミスコスト」を加算すべきだと述べているのです。

 従業員がミスを冒した場合、その穴埋めは会社が行います。リコールが必要になれば回収にかかる費用だけでなく、対応に拘束される経営者の1時間当たりの給料も奪われてしまうことになるはずです。ダンは、このコスト計算をせずに無駄な従業員を抱えている経営者があまりにも多いと嘆いています。

 ダンは、一般的なコストとミスコストをプラスした全体数を従業員の頭数で割ったものが、一人当たりの雇用コストとなり、従業員には少なくともこの数値以上の金額を稼いでもらう必要があるとしています。そのうえで黒字を達成するためには、有能な社員に総コストの2倍・3倍を稼いでもらわなければならないといいます。生み出す利益がこの数値に達していない場合、ダンに言わせればその従業員は「即刻、解雇」です。

 それを実現するためには、仕事のできる人間にはいつも特別な環境を用意しておく必要があると主張しています。冒頭で挙げた「公平性などくそくらえ」というフレーズは、この思いから来た言葉なのです。

厳しい言葉はすべてリーダーに向けられたもの

 ダンの利益追求に対する姿勢は、経営者自身に対しても向けられています。彼は経営者に、「自分で自分に引退勧告をする勇気」を求めています。つまり、会社にとって有益なことにつながるのであれば、他人に対しても自分に対しても厳しくあれと、経営者を戒めているのです。

 自分の引き際を見極め、責任を取る気概があるかどうか。ダンのシビアな言葉は、従業員に対してではなく、リーダー自身に向けられたものなのです。

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高島 ちなみ

高島 ちなみ

フリーライター。2012年より執筆活動を開始し、ビジネスコラム・グルメレポートなどを執筆。無類の図書館好き。趣味が高じて司書資格も取得。ライブラリアン・検索技術者として、WEB媒体向けのレファレンス支援も行う。

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