まさかのために備える知識(第24回)

あの企業はどうしてる?BCPを成功事例で学ぶ

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 世界的な感染症の流行や自然災害の増加にともない、事業継続計画(BCP)の重要性が高まっています。しかし、検討すべき範囲が広いため「BCPを策定したいが、なにから始めればよいかわからない」というケースもあります。「BCP策定のコツ」を実在企業の事例をヒントに解説します。

BCPは“絵に描いた餅”になりがち

 事業継続計画(BCP)とは、企業が、自然災害、テロ攻撃、パンデミックなどの緊急事態に遭遇した時に取るべき行動や方針を定めた計画のことです。内閣府の「事業継続計画策定ガイドライン」には、BCPの必要性や日本と世界の動向、組織体制、教育の仕方など、策定と実践に必要な知識がまとめられています。まずはこちらに目を通すことで、自社のBCP策定に必要な情報を集めることができます。

 しかし、実際にBCPを策定するには「なぜBCPを策定するのか」という本質的な議論を自社で深め、ビジネスインパクト、リスクの洗い出し、発動基準の明確化などを、ステークホルダーとともに包括的に計画を練り込んでいくことが不可欠となります。昨今では事業の継続においてITシステムが不可欠となっているため、システムが被害を受けた際の復旧計画(ディザスタリカバリ:DR)も必要です。

 これらの検討が不十分なまま、テンプレートを書き換えたようなBCPを策定し、結果として実効性の低い「絵に描いた餅」となってしまうのが、BCP策定にありがちな「失敗」です。

 では、企業価値のアップにつながるような実効性の高いBCPを策定するには、どうしたら良いのでしょうか。

規模や業種、自社と似た他社事例をヒントに

 有効な手段のひとつが、自社と同規模、近い業種業態のほか企業のBCP事例をヒントにすることです。例えば、中小企業の取り組みでは次のような事例があります。

 包装資材や緩衝材を製造する株式会社生出は、2009年に大流行した新型インフルエンザをきっかけにしてBCPの策定に着手しました。同社の顧客は、医療機器メーカーや通信機器メーカーなど300社以上にのぼります。なかには人工透析液を製造する企業もあり、顧客からの要請もあって、「短時間で事業を再開できるような体制を構築しよう」と考えました。

 そこでまず会社近くにある活断層に注目し、地震による被災リスクが高いと判断。被災時のシナリオを想定し、「施設内の危険個所の把握」「商品や資機材の転倒・落下防止」「備蓄」などを徹底して行いました。あわせて、自社を含む同業5社で「相互委託加工契約」を結び、代替生産ができる体制を整えています。ほかにも「BCPポケットマニュアル」「大震災初期対応カード」を制作・配布して、社員の意識改革にも取り組みました。

 熊本市の工務店、株式会社新産住拓では、台風や地震を想定した「災害対応マニュアル」を整備しています。社員の安全を最優先に考え、「余震が収まるまで屋根に上らない」「危険がともなう現場では2班1組で作業する」「状況に合わせて柔軟に計画を変更する」といった方針を盛り込み、また、建築知識が少ない社員でも顧客の緊急要請に応えられるように「電話応対マニュアル」と被害状況の「聞き取りチェックシート」を作成しました。加えて、県外の工務店と協定を結ぶという取り組みも行っています。

 こうした対応を取ることは、顧客からの信頼につながります。自社内においては「社員の意識が変わり業務改善に関する提案が増加した」「コミュニケーションが活性化して、愛社精神やモチベーションがアップした」という声も聞かれます。企業にとってBCPは、緊急時だけでなく平時にも好影響をもたらす、効果の高い経営施策でもあると言えるでしょう。

自治体のBCPは、企業でも参考になる

 学校、幼稚園、保育園、介護施設、医療施設など、子どもや高齢者が多い施設では、より安全で確実なBCPが求められます。具体的にどのようなBCPが設定されているのか、その内容を見ていきましょう。

 保育園や福祉園を運営する社会福祉法人福角会は、詳細な事業継続計画書を作成しています。基本計画のほか、地震、風水害、感染症の3つのケースに特化したBCPが盛り込まれ、それぞれの項目に被害想定や初動対応、対応の流れが規定されています。また、運営する全施設の備蓄品と数量、徒歩圏内の職員数、連絡先などが記載され、これらについて「毎年4月1日現在で調査を行う」などの確認・更新ルールが規定されているところもポイントです。綿密な計画と定期的な確認で、万が一の時にしっかりと機能する運用を行っています。

 また、東京都町田市では、2018年7月に、東京都内初の試みとして、認可保育所をはじめとした保育施設のほか、幼稚園も対象とした「災害対応ガイドライン」を策定しました。市内各園でマニュアル策定や、教育、点検、検証などに使えるよう、「目的」や「考え方」に多く言及されているところが特徴です。ほかにも、東日本大震災で被災した認可保育園の様子をまとめたページや、優良事例の紹介記事なども掲載されています。

 基本方針やフロー、ケーススタディまで、詳細な内容が記載されていることが多い公共性の高い組織のBCPは、企業においても参考にすることができるでしょう。

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