2017.10.27 (Fri)

元気な企業はどこが違う?成功企業の戦略とは(第41回)

赤字78億円の施設を即再興!HISのV字回復術

posted by 津山 角雄/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

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 ラグーナテンボス(旧ラグーナ蒲郡)は、三河湾に面した愛知県蒲郡市にあるリゾート施設です。アトラクションやプールを楽しめるテーマパークや、ショッピングモール、レストラン、ホテル、温泉などが人気を博しています。

 現在は業績好調なラグーナテンボスですが、第3セクターが経営していた頃のラグーナ蒲郡は赤字続きの施設でした。

 ラグーナ蒲郡が赤字続きだったのは、周辺に競合が多かったこと、第3セクター特有の意思決定の遅さが要因でした。赤字が増加したことにより、第3セクターは精算。運営は旅行事業を行う民間会社のHISに譲渡されます。すでに長崎県のハウステンボスを再生していた同社ですが、ハウステンボス以上の難題といわれたラグーナ蒲郡を、どのような施策でV字回復させたのでしょうか。

第三セクター運営で破綻した理由

 蒲郡市はJR名古屋駅から電車で約1時間という立地で、三河湾国定公園が有名です。市内には4つの温泉があり、バブル経済に沸く1980年代に、三河湾に面したリゾート開発計画を開始。1987年のリゾート法(総合保養地域整備法)の成立が後押しとなり、1991年から開発がスタートします。

 施設の開発・運営は、愛知県、蒲郡市、トヨタ自動車などの官民が出資した第3セクターの蒲郡海洋開発が行いました。施設名称はラグーナ蒲郡に決定し、2002年に開業。同年の入場者数は428万人でしたが、バブル経済終焉から数十年が過ぎていこともあり、当初の目論見が外れて入場者数は年々と減少していきます。リーマンショックが起きた2008年には、来場者が260万人にまで落ち込んでしまいました。

 元々、ラグーナ蒲郡が置かれていた競争環境は厳しいものでした。蒲郡市より名古屋市に近い、三重県桑名市にあるリゾート施設ナガシマスパーランドという競合施設の存在のほか、市内と県内には有名な温泉がいくつもあったからです。

 また運営体制では出資者の協議や同意を得なければ、新しい施策の実行に移れないという、第3セクターであるが故の意思決定のスピード感もマイナスに働きました。

 このような競争環境や運営体制が来場者の減少に拍車をかけ、収益を悪化させます。ついに2012年には、債務超過が78億円までに増大。出資者である愛知県やトヨタ自動車などは協議して、テーマパークやショッピングモール、ホテルなどの主要事業を民間会社に譲渡し、第3セクターを精算する決定をしました。そこで事業の譲渡先として白羽の矢が立てられたのが、長崎県佐世保市のリゾート施設、ハウステンボスを再生させたHISだったのです。

 しかし同社に譲渡が決定した報道では「敷地が約152万平方メートルあるハウステンボスでは、スケールの大きな新しい施設やアトラクションを建設し集客力を高めたが、ラグーナテンボスの敷地は周辺の関連施設も含めて約30万平方メートルしかなく、同じような施策での回復は難しいだろう」という意見もありました。

敷地の大小に関わらず成功したHIS流の改善策

 ラグーナ蒲郡の経営を引き受けたHISは、施設運営のために子会社、ラグーナテンボスを設立します。同時に施設名称もラグーナテンボスへと変更して、ハウステンボスの姉妹施設であることをPRします。

 敷地面積の違いを認識していた同社は「狭い敷地なので、それぞれの時間帯や各季節に合わせた施策で集客力を向上させる」という方針を打ち立てていました。譲渡前は夏のプールに集客力があったものの、それ以外の季節は目玉となるものが存在せず低調だったからです。

 2015年11月から同社に経営が譲渡されたのち、まずは冬の目玉として、ハウステンボスでも人気だったプロジェクションマッピングを導入。同時に、レストランのリニューアルを図ります。2016年6月にはパティシエの鎧塚俊彦氏がプロデュースするスイーツカフェや、地元食材を使用するステーキハウスをオープンさせ、食の充実を実現。これらの施策により、秋・冬・春の入場者数が前年比の1.5倍に伸びました。

 さらにゴールデンウィーク前の4月下旬には、近隣の大塚海浜緑地にビーチパークを開設。7月には、ハウステンボスの人気アトラクションだったアニメ『ONE PECE』の海賊船を忠実に再現した船で三河湾クルーズというイベントを実施し、さらなる集客力を目指しました。

迅速な判断が従業員の士気を高めた

 次々と新しい企画を打ち出し、初年度から黒字化に成功したラグーナテンボスですが、なぜ第3セクターでは新しい企画が成功しなかったのでしょうか。

 第3セクター時代は、新しい企画が提案されても承認を得るまで時間がかかっていました。その結果、新企画のPRを始動させるタイミングも遅れてしまい、集客力を向上させるチャンスを逃すこととなりました。さらにはPRの費用対効果が疑問視されるなど、従業員の士気を低下させる原因にもなっていました。

 その点でHISはスピード感を重視し、PRも迅速に実施しました。これによりチャンスを逃すことなく、集客力を向上できるようになったのです。

 実はHISが設立したラグーナテンボスの従業員の大半は、第3セクターの元従業員です。彼らは、合否判断やPRの体制変更によって、自分たちのアイデアに自身を持てるようになり、新企画を考えるときの意識が大きく変わったそうです。

新企画の裏にある意識改革がV字回復へ

 競合環境や敷地面積などの問題から、業績の回復が難しいとされたラグーナ蒲郡ですが、新企画を成功させた体験によって、ラグーナテンボスは初年度から黒字化しました。

 この黒字化を成し遂げた要因は、スピーディーな意思決定と、その効果を実感できる運営体制によって、従業員の士気を高めたことにあります。新企画を次々と打ち出すことで育んだ現場従業員の「新しいことへの挑戦」に対する意識の向上こそが、ラグーナテンボスのV字回復を実現させたのではないでしょうか。

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http://toyokeizai.net/articles/-/83463
https://thepage.jp/detail/20140706-00000002-wordleaf

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津山 角雄/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

三重県の山間地から様々な情報を発信するマルチなライター。2005年から7年間、農業をしながらエッセイを寄稿(雑誌「地上」(家の光協会 刊))。現在はWEBメディアを中心に、パソコン関連、住宅関連など数多くのテーマを手がける。また、地元の地域ボランティアに20年在籍し、リーダーも努めている。

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