2017.8.16 (Wed)

元気な企業はどこが違う?成功企業の戦略とは(第34回)

老舗酒造がまったく未経験の海外進出で成功した理由

posted by 津山 角雄/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

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 国税庁によると、酒類の国内総消費量は1996年をピークに、年々減っているそうです。人口の減少に加え、人口に占める高齢者の割合が増加したことで、成人1人あたりの飲酒量も減少していることなどが、減少の原因と同庁は分析しています。

 そのため酒造メーカーは、国内市場だけで活路を見出すことが厳しくなり、海外進出に乗り出すところが増えていきました。しかし、日本酒や焼酎などをメインにしている酒造メーカーのほとんどは小規模事業者です。そのような企業のほとんどは、海外輸出に向けた販路開拓は未経験のため、手探りでの挑戦が続いています。

 江戸時代末の万延元(1860)年に創業した大分県臼杵(うすき)市の老舗酒造メーカー「久家本店」(くげほんてん)も、未経験である輸出販路の開拓に2011年から挑戦しました。今では韓国、香港などに輸出実績を持つまでの成功を収めています。同社はどのようにして輸出販路を開拓したのでしょうか。

海外に自社商品を売り込むためには

 海外輸出を目指すにあたり、まずは自社製品を知ってもらうことが重要です。国内向けの販売促進活動であれば営業相手の見当はつきますが、海外は流通形態や商習慣が違うため、まずはそれらを学ぶことが必要となります。

 そのよう場合は、中堅・中小企業などの海外展開支援をサポートするジェトロ(独立行政法人日本貿易振興機構)を活用することがあります。農林水産物・食品の輸出支援にも力を入れている同機構は、世界的に評価の高い海外の食品見本市に日本パビリオンを設置して商品を紹介したり、海外バイヤーを招いた見本市や商談会を国内外で開催しています。

 清酒(日本酒)、焼酎、リキュール(梅酒)を製造・販売する久家本店も海外進出に乗り出すときに、ジェトロが主催する「食品輸出商談会 in大分」へ2011年10月に参加しました。その後1年足らずで、久家本店はさまざまな商談会や見本市に参加していきます。

 その1つで、韓国のバイヤーとの商談を掴みます。ジェトロの仲介により商談を重ねた結果、輸入代理店契約を結び、韓国市場への進出を開始します。そして2012年11月に開催された韓国の食品見本市で、バイヤーとともに小売店へプロモーションを行い、焼酎の受注を獲得。初めて輸出にこぎつけました。

現地での営業を成功させたパートナーの登場

 久家本店は、同時期に香港への輸出にも着手していました。2012年、香港で行われた見本市の日本ブースに参加します。同年は良い商談に恵まれませんでしたが、翌年になると香港のバイヤーから、2013年の香港の見本市会場で会いたいという打診が、久家本店のFacebookに届きます。

 現地で香港のバイヤーに会うと、彼らは30代という若さでした。しかし久家本店は話を進めるうちに、彼らのビジネスに対する誠意を感じたそうです。信頼感を寄せた久家本店は、香港へ日本酒を輸出するために現地で営業を始めます。バイヤーの熱意や輸送コストを抑えるアイデアも手助けとなり、2014年には日本酒を香港へ輸出する販路開拓に成功しました。

 香港や韓国への輸出を達成した久家本店は、国内外のさまざまな見本市などに出店することで、自社商品をアピールしました。また商談を重ねることで、輸出国の商習慣や法令などの知識を深めていったのです。

 ジェトロのウェブサイトでは、久家本店の韓国輸出を見本市の活用事例として紹介しています。そのレポートの最後で、ジェトロ担当者は「輸出段階に応じてさまざまな支援ツールを提案しご利用いただいたが、1つ1つの課題に真摯に向き合い乗り越えた(久家本店)社長の熱意があったからこそ」と述べています。

企業だけでは足りない海外進出に必要なもの

 人口減少による日本の国内市場縮小は、さまざまな業界で頭を悩ませている課題です。その打開策として海外進出を推し進める行政の支援も、多種多様になっています。そのような環境下で久家本店が輸出を成功させた要因は、行政(ジェトロ)の支援を活用できたこともありますが、16代目社長・久家里三(くげさとぞう)氏の熱意も忘れてはいけません。

 久家氏は、2004年に大手建設会社を退職して、久家本店を継ぎます。そして社長就任の年に合資会社から株式会社へと組織を改変し、2010年に創業150年を迎えました。

 久家氏は創業150年に際して、商売の基本である伝統の味を守ることを掲げていますが、同時に企業の様態に固執することなく、柔軟に適応してきた積み重ねで150年という節目を迎えたとウェブサイトで述べています。その柔軟な対応の1つが海外進出であり、伝統の味を守るために熱意を傾けたのです。

 久家本店の輸出量は年々、増加しています。現在は中国、タイなどへの輸出も計画しているそうです。久家本店の事例は、海外進出には行政と海外パートナーの協力と支援に加え、企業の情熱も欠かせないことを証明しています。

【関連記事】
http://j-net21.smrj.go.jp/expand/overseas/company/20151207101201.html
https://www.jetro.go.jp/case_study/kugehonten.html
http://www.ichinoide.co.jp/contents/kaisya.html
http://www.pref.oita.jp/10400/viento/vol12/008_kura/kura.html
http://www.nrib.go.jp/kou/pdf/51kou06.pdf
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000272/01_mokuji.pdf

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津山 角雄/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

三重県の山間地から様々な情報を発信するマルチなライター。2005年から7年間、農業をしながらエッセイを寄稿(雑誌「地上」(家の光協会 刊))。現在はWEBメディアを中心に、パソコン関連、住宅関連など数多くのテーマを手がける。また、地元の地域ボランティアに20年在籍し、リーダーも努めている。

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