ICTで業務を効率化(第11回)

ICTによる勤怠管理システムは、経営の「核」である

posted by ゴンロク

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 近年、ブラック企業による長時間の残業が社会問題化するようになりました。政府もこの問題に対応するため、従業員に時間外労働を強いる企業に対する指導の強化など、労働基準法の改正を検討しています。

 しかし、勤怠管理には多くの労力とコストが必要となります。従業員1人1人の勤怠データを管理することだけでも骨が折れる作業ですし、さらにはそれを元に給与を計算する作業も伴います。加えて給与明細書の発行など、その作業は多岐に渡ります。今後、労働基準法が改正された際には、時間外手当や最低賃金などの新基準にも対応する必要が出てきます。

 こうしたバックオフィス(管理部門)作業を簡単かつ正確に処理するためには、ICTによる勤怠管理が便利です。勤怠情報がリアルタイムで管理することで、スタッフの現在の稼働状況を把握し、さまざまな企業戦略を決定するための情報としても活用できるのです。

 今回は、ICTを活用した勤怠管理システムの可能性を紹介します。

江戸時代と現代の勤怠管理は何が違うのか

 最新の勤怠管理システムを見る前に、そもそもなぜ勤怠管理というものができてきたのか、その歴史を紐解いてみましょう。

 勤怠管理の仕組み自体は昔からあり、日本では江戸時代に存在していたと伝えられています。たとえば、江戸時代に名門の呉服屋として名を馳せ、最盛期には1,000人以上の従業員(当時は奉公人)を要する一大アパレルメーカー「三井越後屋」も、勤怠管理システムを導入していました。

 三井越後屋の本店は江戸にありましたが、それ以外の都市にも拠点を持つため、複数の拠点をまたいだ従業員の管理が必要になります。このとき導入した仕組みが、手書きの帳簿である「改勤帳」をベースとした、勤怠管理と褒賞制度でした。スタッフの欠勤状況を把握しつつ、よく働く従業員に褒賞を与える仕組みを導入することで、従業員を統制し、彼らのモチベーションを維持していたのです。

 江戸時代に誕生したこの勤怠管理システムは徐々に発展し、昭和の時代には、専用のカードを打刻機に差し込み、勤怠時間を刻印する「タイムカード」が登場しました。現在も使用し続けている企業も多いことでしょう。

 三井越後屋の帳簿やタイムカードの勤怠管理は、導入の目的は「従業員の統制」がメインでした。しかし近年は、ICTで勤怠を管理することにより、人事戦略や人材配置に役立てるケースが増えてきています。

吉野家もICTの勤怠管理システムを使っている

 ICTで勤怠を管理する最大のメリットは、直近の労働時間が閲覧できることにあります。たとえば、あるプロジェクトの工数や単価に、従業員の勤務時間を連動させることで、プロジェクト全体の原価をリアルタイムで管理することができるのです。つまりICTは、バックオフィス業務を単に省力化するだけでなく、企業戦略の情報源として活用できるようにしたのです。

 勤怠管理システムの導入が、企業活動に影響を与えた例は多く存在します。たとえば、チェーン展開する牛丼の「吉野家」では、各店舗とキャスト(店舗スタッフ)、本部間の情報共有が難しく、それが他店舗への応援やシフト作成業務に悪影響を及ぼしていたといいます。そこで導入したのが、ガルフネット社の勤怠管理システム「Gulf-CSM勤怠管理」をでした。

 同社が採用したシステムは、単なる勤怠管理だけではなく、情報共有の要素を持たせた “対話型”勤怠管理システムでした。これにより、店舗・キャスト・本部間のコミュニケーションが活性化され、たとえば店舗からの応援要請に応じた人材移動がスムーズになり、シフト作成の労力が軽減できたといいます。さらに、過去の実績から、どの曜日にどの程度の客数が見込まれるかを勤怠管理システムと連動させて、人員の適正な配置にも役立てているといいます。

 また、名古屋に本社を構える、鶏肉の加工や店舗経営まで手掛ける「さんわグループ」では、それまで手作業で行っていた勤怠管理業務を、セイコーソリューションズ社のICT勤怠管理システムに一元化。従来は各現場からのデータの吸い上げと集計、勤務状況との突き合わせに多大な時間を要していましたが、それらをほぼ自動化しました。

 これにより、管理本部の業務負荷が大幅に軽減され、データを視覚的に表示できるようになりました。各現場のリーダーにも、経営感覚が備わるようになったとのことです。さらに、日々蓄積されていくデータを分析し、店舗運営のコスト削減や補充人員の配置も効率的に行えるようになったといいます。

勤怠管理は企業活動の「核」

 このようにICTによる勤怠管理システムは、もはや単なる給与計算のデータ収集ツールではないといえます。データを活用することにより、店舗運営や人材配置に必要な情報を割り出し、それを現場リーダーやメンバーと共有していくことも可能になるのです。

 ICTによる勤怠管理システムは、社内にサーバーや専用端末を設けるオンプレミス型と、クラウドサービスを利用するクラウド型に大別できます。このふたつを比較した場合、イニシャルコストの安さでいえば、クラウド型が有利です。自社の都合に合わせて管理したいというのであれば、オンプレミス型が良いでしょう。

 勤怠情報の効率化や、人材戦略への応用、原価管理・労務管理の効率化など、ICTの勤怠管理システムを導入することによるメリットは多岐にわたります。そのいずれもが企業活動の核となり得ます。昔ながらの勤怠管理システムを利用している企業は、ICTによる勤怠管理システムに置き換えることで、経営をもう1つ上のステージへと上げることができるかもしれません。

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ゴンロク

ゴンロク

フリーライター。IT企業で約10年間、エンジニアやERP導入コンサルタントとして勤務。2015年より執筆活動を開始し、主にICTサービスやBtoBビジネス、社会人の転職事情についての分野を執筆。

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