2016.2.1 (Mon)

スマートフォン時代の企業サバイバル術(第1回)

社員のスマホ、規制するか使わせるか、それが問題

posted by 中村 俊之

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 スマートフォンに代表されるITの新しいムーブメントにより、多くの人がインターネットのサービスを手軽に利用できるようになりました。企業規模によらず、どの企業もこのムーブメントを無視するわけにはいきません。本連載では、企業の人事、労務問題に詳しい社会保険労務士・中村俊之さんの監修のもと、この「スマホ時代」に、より魅力的な企業になっていくためのポイントを考えていきます。

 スマートフォンは現在、利用者が急増し、利便性も非常に高くなっています。その結果、プライベートと仕事の両面で私物のスマートフォンを活用しているケースも見受けられます。これは社内を見渡しても実感できるのではないでしょうか。このように、プライベートで使っているスマートフォンやノートパソコンといった機器を、職場で用いることを「BYOD(ビー・ワイ・オー・ディー、Bring Your Own Deviceの略称)」といいます。BYODには、様々な課題がありますが、一方で、特にフットワークの軽さに強みのある中小企業にとっては新しいチャンスの可能性も持っています。

「仕事用に使った電話料金を払ってほしい」

 スマートフォンの利便性としては、電話やメールで使えるだけでなく、SNS(Social Networking Service)を使ったやりとりや、複数のメールアドレスを簡単に設定できることがあげられます。現代的なコミュニケーションを進めるためには、もはや欠かせない人も多く、フル活用したくなるのは当たり前ともいえるでしょう。その結果、プライベートの機器を仕事に用いている人も少なくありません。

 このような状況の中、ある企業の経営幹部からこんな相談があったそうです。「自分のスマホを仕事で使った電話料金をなんとかしてほしい」、「通話料はカケホーダイだからともかく、業務用で使っているのだから基本料金の半分くらいは……」という社員がいるというのです。勝手に自分で使っておいてつべこべ言うな、と思われるかもしれません。しかし、スマートフォンという機器の利便性を考えると、仕事でも使いたい社員がいることは十分あり得る上、外勤の多い社員にはすでに仕事で使った電話料金がボディーブローのようにサイフに響いている可能性も高そうです。

個人のスマートフォンを会社で使うリスク

 もちろん、業務用の携帯電話を持たせて、管理することは可能で、実際にそのような運用をしている会社もあります。ただ、スマートフォンでの運用となると、なかなかのコスト高。必要な社員すべてに配布とまでは簡単には踏み切れない面もあるでしょう。

 使う側としても、もう1台持たされるのはありがたい反面、毎日2台を管理し続けるのは、なかなか面倒でもあります。結局、会社側も社員側も二の足を踏んで、私物を成り行きで使う状況に……。実際、電話料金や基本料金の話をした社員も、強く要請しているというより、一部面倒見てもらえないか、といった遠慮がちな話だそうで、事を荒立てるつもりはなかったようです。それで済むなら会社としては引き続きお願いしたいという面も経営者の気持ちとしてはあるでしょう。とはいえ、私物を会社に持ち込んで使うにはやはりリスクもあります。

 スマートフォンに登録される情報が、様々な形で外部に流出してしまうリスクもその一つ。たとえば、連絡を取り合ったお客さまの電話番号が外部に流出してしまう危険性。あるいは、顧客情報が社員の友人などを通じて出て行く可能性。変な話ですが、社員個人の携帯電話に対して、仕事で知り合った相手からストーキングまがいの事をされる可能性もあります。また、秘密保持契約を結んでいる場合、内容によっては私物でのメールのやり取りが条項に触れる恐れもあります。ヒラリー・クリントン氏が、国務長官時代に公務に私的なメールアカウントを使っていたことが大きな問題になったのも、そういったリスクあることの証しでしょう。

新しい会社の仕組みを考えるチャンスにも

 実はこのようなリスクはBYODの広がりに伴って様々な対策が立てられつつあります。BYODは、Bring Your Own Deviceの略、つまり「自分の機器を持ち込んで使うこと」です。商取引上のリスクを減らすことを考えれば、プライベートな機器を仕事に持ち込むのはまかりならん、というのがシンプルな解決策かもしれません。

 しかし、リスクを恐れすぎて、ITの利便性をかたくなに取り入れないのももったいない話。たとえば、この相談をしてきた社員も、会社の邪魔をしたいのではないでしょう。むしろ会社の役に立つ方法を自ら積極的に用いているといえます。経費の面での解決策はいくつか考えられますが、さらに一歩進めて新しい通信手段を業務に取り入れるスタート地点とするのもよいでしょう。

 新しい手段を導入するにあたっては、社内規程や場合によっては就業規則まで踏み込む必要があります。しかし、社内を改めて見渡せば、ニーズがあちこちにあることが見えてきそうです。外勤が多い社員向けだけではありません。時短勤務や在宅勤務を含めた様々な社員にとってもBYODの活用が利便性を生み出す可能性を持っています。

 使用のルール決め、費用の振り分け、個人情報保護などクリアすべき課題は多岐にわたります。しかしそれを恐れず、まず、社内のヒアリングからはじめ、その必要度や解決策を探るところからはじめてはいかがでしょうか。

 スマートフォンでゲームやSNSに熱中する社員を苦々しく見ているだけではもったいないもの。あなたの会社が新しい技術やコミュニケーションを取り入れるチャンスがBYODにはあるのです。

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中村 俊之

中村 俊之(中村社会保険労務パートナーズ
【記事監修】

特定社会保険労務士、中村社会保険労務パートナーズ代表。1954年、東京都生まれ。2005年、社会保険労務士登録、同年に「中村社会保険労務パートナーズ」(文京区本郷)設立、代表として現在にいたる。30年以上にわたり人事・労務一筋に携わり、人事労務相談・研修講師・人事制度設計・書籍の執筆監修等を行っている。

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