2016.2.1 (Mon)

ビジネスマガジン(第16回)

お客さまの「期待」どおりは「顧客満足」ではありません

posted by 須田 俊江

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「顧客満足」を経営課題として取組む企業は多くあります。それは、自社が提供する商品・サービスにお客さまが満足されてリピート客となれば、売上向上が期待でき、さらにその口コミによる新規顧客の獲得も見込めるからです。
ところで「顧客満足」とは何でしょうか。多くの方が「お客さまのニーズに応える商品やサービスを提供して喜んでいただくこと」とお考えになられているのではありませんか。しかし「ニーズに応える商品やサービスを提供する」という視点に、顧客満足を阻む一つの落とし穴があります。
今回は「顧客満足」について取り上げ、お客さまの立場で考えることの重要性について考えたいと思います。

期待以上の結果をもたらした時にお客さまは「満足」します

「顧客満足」を理解するための3つの関係式をご紹介します。

(A)事前期待>事後評価 =不満足
(B)事前期待=事後評価 =当然
(C)事前期待<事後評価 =満足

お客さまは、商品やサービスを購入するとき、必ず何らかの期待を抱いています。顧客満足度を決定づけるのは、この事前期待と事後評価の相対的な関係です。

・(A)のケース
新規開店したばかりのヘアサロンの例です。外装も内装もニューヨークをイメージさせ、少々気になる。さっそく予約をとり、変身する自分に期待を抱いて出掛けます。しかし思い通りの仕上がりにならず、シャンプー等のレベルも低かったとします。お客さまは抱いていた期待が打ち砕かれたのですから、このヘアサロンに大いに失望します。お客さまは二度とこの店に行くことはありませんし、場合によっては、身近な人に自分の経験談を披露するかもしれません。
このように、事前期待が事後評価に及ばない場合、お客さまが感じるのは「不満足」です。

・(B)のケース
同様にヘアサロンで施術を受けたところ、指定したヘアスタイルブックのデザインどおりの仕上がりとなりました。シャンプー等の対応も悪くはなかった。お客さまは抱いていた期待を裏切られることはなく不満はないのですが、それ以上の価値を見出すこともありません。「ヘアサロンとしては当たり前のレベル」と考える程度であれば、今後も継続して当店を利用しようとは思いません。他店でもよいからです。
このように「お客さまのニーズに応える商品やサービスを提供」していても、事前期待と事後評価が同等の場合、お客さまが感じることは「当然」であり、心からの満足ではないのです。

・(C)のケース
このケースでは、ヘアサロンから新しいデザインをすすめられ、チャレンジしたところ新しい自分が発見できたとします。シャンプー等も丁寧で、施術を通してリラックスできる時間を持つこともできました。お客さまは期待以上のサービスのクオリティに心から感動し、満足感に浸るのです。お客さまは引き続き当店を利用するリピーターとなり、固定客に育ちます。また感動体験は、友人・知人への口コミ拡散を促し、お客さまが新しいお客さまを呼んでくださいます。
このように、事前期待を上回る事後評価の場合、お客さまは「満足」を感じます。
「顧客満足」を決めるのは企業ではなく、お客さまです。「顧客満足」とは、お客さま自身が自らの基準で、納得できる商品やサービスの価値を見出すことといえます。

「当たり前」のことが「当たり前」に出来ていますか?

顧客満足を考える上で、「顧客サービス」を欠かすことはできません。「製造業や卸売業、小売業でもサービス?」と問われそうですが、そのとおりです。サービス業では提供するサービスが対価を生みますが、製品や商品などを扱う業種であっても、さまざまなサービスと共にモノは流通しています。例えば、接客サービス、安売りサービス、アフターサービス、経営理念ともつながる社会貢献等々。このようなサービスを一体として提供することで、中心となる商品やサービスのクオリティを高めて、お客さまの期待に応えています。
ところでお客さまは、これらサービスを現場の従業員から受けています。サービスを受ける「瞬間」は数知れず、お客さまは都度、従業員の態度、表情、言葉遣い、しぐさ、目線、専門知識、心配り、親切などに何らかの印象を持ちます。その一つひとつの印象がよいものであれば、お客さまはその企業を好ましく思います。ところがある「瞬間」に横柄であったり、対応が悪かったり、清掃ができていなかったりすると、他のサービスに何ら問題なくても、一瞬にして企業に対して悪い印象を持ちます。そしてお客さまの評価は、このたった一つの不満足要因で「満足」を消してしまうのです。
従業員サービスは、お客さまの立場から見ると、出来ていて当たり前のことといえます。それぞれが「顧客満足」の主要素となるものではありませんが、その「当たり前」のことが、「顧客満足」を支持しています。
しかし現場の従業員に、「顧客満足向上」を単に強要しても、企業の経営理念や方針が「お客さまに奉仕する」というように心得違いをするだけです。真の顧客満足とは何たるかが企業全体に浸透しない限り、お客さまに不快な印象を与えてしまいます。企業は、お客さまにサービスをするその「瞬間」に、その全姿勢が問われているのです。

「顧客満足」を決めるのはお客さまです

「顧客満足」は、お客さまの事前期待と事後評価の比較で決まるとお話ししてきました。冒頭で触れた「ニーズに応える商品やサービスを提供する」視点の危うさとは、そこにお客さまの期待を上回る提案やクオリティの提供と、当たり前のことが出来る現場の実力がなければ、顧客満足は得られないということです。また「お客さまに喜んでいただく」という視点での活動は、事後評価に着目した取組みです。お客さまがどのような「事前期待」を抱いているかを掴まなければ顧客満足は得られません。しかもお客さまが個々に抱く「期待」はそれぞれ異なり、その日の気分によっても左右されます。「お客さまの立場に立って考える」ことの重要性がここにあります。
「顧客満足=CS(Customer Satisfaction)」は、1980年代アメリカで提唱され、以降その理論は褪せることなく企業経営に取り込まれています。しかし日本の中小企業等では、CSを推進する担当部署の設置はほとんどなく、「顧客満足」という言葉が独り歩きしているように見受けられます。しかし真の「顧客満足」を意識することで、実践できることはあります。
一つ目は、お客さまの期待を理解し、それを起点にして、お客さまの立場で考えることです。
二つ目は、企業において「当たり前にやるべきこと」を知り、きっちりできるようにすることです。どの業種に限らず、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)はもとより、人の教育が重要です。それがお客さまに「この会社はよい」と印象づけ、中心となる商品・サービスの評価を向上させます。
「顧客満足」はお客さまが決めるもの。自社のお客さまに期待以上の評価をしていただいていますか?

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須田 俊江

須田 俊江

中小企業診断士。情報処理技術者。中小企業のモノづくりから出口戦略まで、マーケティングを見据え一貫したご支援を得意とする。現場に密着し、経営者の想いを具現化することを信条とする。経営革新支援、企業再生支援実績多数。

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