2016.2.1 (Mon)

ビジネスマガジン(第5回)

中小企業こそ顧客との密なコミュニケーションが重要!~顧客視点のコミュニケーションで顧客との信頼関係を築く~

posted by 小紫 恵美子

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顧客に価値を届けるマーケティングについて考えてきたこちらのコーナー。前回は「Customer Cost」、顧客にとってのコスト負担について考えました。最終回となる今回は、「Customer Communication」、顧客とのコミュニケーションについて考えていきます。

1.コミュニケーションで目指すもの

Communicationの語源はギリシャ語で「共有の」という意味を示すcommunisだと言われています。マーケティング・ミックスの4Cのなかのコミュニケーションは、企業と顧客双方とで、知識や想いを共有し、信頼関係を築き、ファンになってもらい、くり返し購買をしてもらうという関係性を築くことを目的としています。だからこそ、企業は、「顧客の視点」を常に念頭において、「顧客とコミュニケーションをとる仕掛け」を作っておくことが求められるのです。
では、顧客は、どのように企業とコンタクトをとり、購買をし、ファンになるに至るのでしょうか。過去、さまざまな消費者の購買意思決定モデルが提示されてきましたが、インターネットが発達した現在は、AISCEASモデルが有効です。AISCEASとは、Attention(注意)、Interest(関心)、Search(検索)、Comparison(比較)、Examination(検討)、Action(購買)、Share(情報共有)の7段階を指します。
本稿では、これらの7段階ごとに、企業と顧客の側でどのようなコミュニケーションがなされるのか、それにあたって企業側がどんなことに注意すべきなのか、見ていきます。

2.Attention、Interest段階の”壁”が崩れる

中小企業や個人事業主にとっては、最初のAttention(注意をひきつける、気付いてもらう)ことが最も高い壁でした。顧客に自分たちのことを知ってもらうには、何らかのコミュニケーション手段が必要となります。
インターネット登場前、自社を知ってもらうには広告を打つか、営業活動を実際に人の足で行うか、といった方法が主でした。コストか人の力をかけるかということが必要で、中小企業や個人事業主が大きく手を広げることは一般的に難しかったのです。
しかし、今では特別な技術を知らなくてもホームページを作成することが容易になり、企業のホームページがネット上に掲載されています。ホームページは従来紙媒体であった会社案内のように、基本情報の提供が主な機能です。しかも、海外にも発信できる優れモノ。外国語によるページを作れば、海外取引にもつながる手段となります。
もちろん、ネット上に無数に存在するホームページの中からすぐに自社を探し出してもらうことは困難ですが、少なくとも、会社側から気付いてもらい、興味を持ってもらうための努力として、ホームページを掲載することは有効な手段です。検索してもらいやすくなるためのSEO(※)対策をすればさらに有効になるといえます。

※サーチエンジンの検索結果ページの検索順位を上げる(表示順の上位に自らのWebサイトが表示される)ための技術や手法。
サーチエンジンは登録されているWebページをキーワードに応じて表示するが、この順位が上にある方が検索エンジン利用者の目につきやすく、訪問者も増える傾向にある。

3.Search、Comparison、Examinationで顧客をつかみ、Actionへ誘導

Search(検索)、Comparison(比較)、Examination(検討)は、従来の購買意思決定モデルにはなかったステップです。インターネットが普及したあとに登場してきました。
企業にとってインターネットを使う効果は、コスト削減とスピードアップの二点にあります。顧客とのコミュニケーションに大きなコストをかけにくかった人たちにとって、マーケティングの可能性が広がっていることになります。また、スピードアップは他の会社との差別化につながります。
企業にとっては、このステップで自社の製品やサービスが競争、比較検討の目にさらされることになるため、脅威ともとれます。しかし、「ピンチはチャンス」、まさにこのステップこそ、他社に対する比較優位をとるブランディングのチャンスなのです。
消費者は、このステップでまず自分の欲しい商品やサービスについて検索をし、目星をつけます。そして、その目星をつけた製品やサービスが本当に自分のほしいものかどうかをCGM(Consumer Generated Media)にアクセスして確かめようとします。CGMとは、口コミサイトやQ&Aコミュニティ、SNSやブログ、BBSなどを指しています。
こうしたCGMの威力は大きなものです。実際に都内で地域子育てママ支援を実施しているCグループでは、主催者である女性経営者が日々の自分自身の想いをブログに書き綴っています。こうした彼女の想いに共感した同じママの立場の人たちが、彼女が展開している子育てサロンに集い、あるときは講座の講師として、あるときは講座への参加者として、自分のキャリアアップを積み、サロンに貢献しています。ホームページも合わせると、ネット経由の集客は全体の8割から9割にあたると言います。
消費者から見れば、企業からの一方向的な情報提供ではわからない、実際に働く人たちの「人となり」、あるいは「想い」といった要素をこうしたCGMによって把握できます。企業側はここで、自社製品・サービスの他社との比較優位をうたうことはもちろん、自社のこだわりや、製品・サービスにかける想いなど、生のことばで伝えることで差別化を図ります。

4.Action(購買)を確実に遂行して、よい評判をShare(情報共有)してもらう

こうして消費者は自分の検索結果を確信に変えて、Action(購買)に至ります。購買段階においても、顧客視点が重要です。せっかく意思決定をしても、買う段階になってネット上で購買に手間がかかるようでは、顧客を逃してしまいます。
そして、購買に至った後も、顧客とのコミュニケーションは続きます。購入後もCGMで、よかったという評判をシェアしてもらうことで次の顧客を呼ぶことができます。また、購買後の対応でも引き続き差別化を図り、くり返し購買をしてもらうことも可能です。
たとえば、ねじ製造会社のD社はICTを活用したスピード感ある対応で、一度つかんだ顧客を離しません。D社では過去の顧客データをすべてデータベース化しています。問い合わせのお電話が入ったら、顧客が名乗るよりも先に顧客の名前を呼んで対応することはもちろん、過去全ての注文履歴がデータベース化されているため、金額や納期等、顧客が知りたい情報をすぐに提供することができるのです。どんな注文にも対応までの時間をタイトに決めており、顧客の信頼は大きく、価格は高くともくり返し注文を受けることができています。
Communicationは一度成立したらそれで終わり、ではなく、双方向で、かつずっと続くもの。購買後もコストをかけずに、スピード感をもって顧客に対応する。ICTが相性のいい分野といえます。

5.まとめ

ここまで、3回にわたって顧客に価値を届けるマーケティングについてみてきました。顧客の課題解決のためにICTを活用していること、利用者のリスクとコストの勘案のこと、そして、身近になったICTで顧客との双方向のコミュニケーションを収益に結び付けていくことをご紹介してきました。
常に顧客の視点にたって、何が提供できるのかを考え、それにふさわしいICTを選択していくこと。地道ではあるけれども誠実な対応が、顧客との信頼関係を醸成し、双方にとっての真の価値を生み出していくことにつながるのです。

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小紫 恵美子

小紫 恵美子

中小企業診断士。大学兼任教員。東京大学卒業後、NTTに入社。中小企業診断士を取得後、出産育児を含め10年を経て独立。「人が誇りを持って働ける社会を創る」ことに貢献すべく、経営革新等企業支援や女性起業支援を中心に活動中。

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