2016.2.1 (Mon)

経営者をトラブルから守る法律知識と手続き(第3回)

「節電のために、勤務時間を変えますか。」

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この夏の節電対策が練られていますが、最初に話題となったのは「サマータイム」の導入です。正確にいえば、「就業時間の繰り上げ」にあたりますが、だからこそ、これを採用する場合に、労基法に触れる可能性があるかをあらためてチェックしておいた方がよいでしょう。

就業時間の変更による節電策には、他に「休日の変更」があります。これについても、経営者の裁量でどこまで融通がきくものなのか、法的なことについて確認しておきましょう。

従業員の側が懸念するのは、
 ①サービス残業が発生しやすくなる?
 ②給与の計算根拠はどうなる?
 ③休日の変更は一方的に会社の判断に従わなければならない?
 などです。

ここでは、労基法の基本を参照することで、そのあたりを明らかにします。

今回のテキスト

今回採用するテキストは『やさしく解説 労働法の基本がわかる』(佐々木力著・自由国民社刊)です。

労働時間を週や月によって変更できるか

  会社は週によっては多忙な曜日があります。また月によっては多忙な週があります。そういう多忙なときに労働時間を長くできれば、つまり業務に合わせて時間編成を変更できればよいのだが、と考える経営者もいるでしょう。たとえば、週の総時間数は減らさないで、曜日によって時間を変更し、労働時間が長い日もあれば短い日もあるというふうにです。

時差出勤をさせるには条件があるか

 就業規則に定めた始業時刻を遅らせ(または繰り上げ)、終業時刻をそれだけ延ばす(または繰り上げる)ことを「時差出勤」といいます。
 時差出勤は就業規則などに定めがあれば、使用者の命令でさせることができます。
  時差出勤は会社全体でも、部課全体でも、あるいは特定の個人でもさせることができます。
 時差出勤をさせられる方(従業員)としては、困ることもあるでしょうが、業務の都合でやむをえず時間をずらす必要が生ずる場合もあるのです。そのために、あらかじめ時差出勤の規定をしておくことが要件とされます。規定があれば必要によって実施してよいのです。
 時差出勤に似たものに、フレックスタイム制があります。これは出勤時刻や退社時刻を従業員が自主的に決めることのできる労働時間の制度です。

時差出勤の規定例

[第〇条]
<就業時間>
就業時間は、1日につき休憩時間を除いて実働8時間とし、始終業時刻ならびに休憩時間を次の通りとする。
 始業時刻 午前9時
 終業時刻 午後6時
 休憩時間 午前12時から午後1時

[第〇条]
<時差出勤>
会社は、全社員または一部の社員について、業務の都合により、始業、終業および休憩の時刻を繰り上げ、あるいは繰り下げることができる。

休日をほかの日と振り替えられるか

休日振替の制度を利用する
 会社の都合で休日にどうしても出勤してもらいたい場合があります。その場合は2つの方法をとることができます。

 1つは賃金を支払って「休日出勤」をさせる方法で、もう1つは「休日振替」の方法です。
休日振替とは、休日を労働日と振り替える (入れ替える)ことです。たとえば日曜日 (休日)と水曜日 (労働日)を入れ替えることです。そうすると日曜日にはいつもの通り勤務し、代わりに水曜日を休みます。
 振替は業務上の必要があって、会社としてやむを得ず行うべきものです。
 休日振替を行うときの留意点をあげておきましょう。

①会社の命令について
 休日振替は会社の命令に基づくものであって、従業員が勝手に行うものではないので、従業員が振替をしてもらいたかったら、会社の許可をもらわなければなりません。

②振替の対象者について
 振替は会社全体でも部・課全体でも、特定の個人に対しても行うことができます。

③振替による賃金の取扱いについて
 振替を行っても、基本的に賃金は変わりません。

休日振替をするための要件
 休日の振替を実施するには、次の2つの要件を満たさなければなりません。

①就業規則などに振替の規定を定めること
②事前に振替日 (例図の水曜日)を指定すること

 ①については、たいていの会社には規定がありますから、問題はないでしょう。②については、必ず指定しなければなりません。
 振替とする日については法律の定めはありませんが、なるべく近い日にするのが望ましいでしょう。

休日に勤務させたら必ず代休を与えるのか

代休と休日振替の連いに注意
 休日振替以外の方法で休日に勤務させるには、休日勤務を命ずる方法があります。この場合は、もちろん休日割増賃金を支給しなければなりません。そうしたら、ほかに休日を与えなくても結構です。

 その場合に、ほかの日に休みを与える会社があります。この休みのことを「代休」といいます。
なお、休日勤務をさせた結果、実際に休んだ日が週に1日もなかったとしても、それは違法ではありません。休日勤務は、休日は与えているけれどもその日に勤務させたということであって、休日を与えていないわけではないからです。

代休をとったときの賃金の取扱い
 休日が「労働義務がない日」なのに対し、代休は「労働義務がある日だがその義務を免除された日」です。
代休は休日振替と違って、法律では与えても与えなくてもどちらでもよいことになっているので、会社の決め方次第なのです(なお、休日振替の制度をとっている会社では、必ず法定休日を確保しなくてはなりません)。
 代休日の賃金の取扱いについては、代休日には休むのですから、賃金は「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、支給しなくても違法ではありません。
 支給しないということは、カットするということです。そうすると休日割増賃金(法定休日の場合は135%)から代休日の賃金をカットする取扱いをする会社の場合(100%)、割増分(35%)だけが従業員の手元に残る勘定になります。
 代休をいつまでにとらせるかについては、法的な期限はありません。

1年単位の変形労働時間制の作り方は

年間の総労働時間が1年の法定労働時間以下であること
 1年単位の変形労働時間制のケースを考えます。
 単位期間を1月から12月までの1年間とします。休日は原則として毎週土曜、日曜および国民の祝日のほか、8月、12月に数日間をあてます。1日の労働時間は8時間です。
 そのようにして設定した休日は、年間で118日で、つまり1年間の労働日は247日です。1年単位の変形労働時間制においては、年間の労働日数は280日以下にしなければなりませんが、この場合は要件に適合しています。
 この会社は10月から3月までが繁忙になるので、10月から3月までは休日を少なくし、1月、2月、3月、12月の4週目と、11月、12月の3週目の休日は日曜日だけ(週の労働日は6日間)とします。
 上記の週の労働時間は48時間(8時間×6日)です。これでは週の法定労働時間を超えますから、変形労働時間制でない限り、法律違反となってしまいます。
 そこで、1年単位の変形労働時間制の導入が認められるかどうかを検討しなければなりません。認められるかどうかは、この会社の年間の総労働時間が1年の法定労働時間の範囲内におさまればよいわけです。

1年間の法定労働時間
= 40時間×365日/7
= 2085.7時間
この会社の1年間の総労働時間=8時間×247日=1976時間

この会社の労働時間は法定労働時間以下となるので、変形労働時間制の導入が認められます。労使協定を結んで、1年単位の変形労働時間制を導入すれば、前記の週の労働時間48時間は法律違反ではなくなります。

早出・残業時間を年休に振り替えられるか

60時間超の法定時間外は有給の休暇で代替できる
 早出・残業をしても手当をつけないで、その時間を年次有給休暇に振り替えることはできるでしょうか。これまでは法定時間外労働に対しては、法定の割増賃金を支払わなければならないことになっていて、これを他の方法で代替することはできませんでした。
 しかし、平成22年4月から、労使協定を締結することにより、1か月の時間外労働が60時間を超えた部分に対しては、割増賃金の率を引き上げる(25%以上から50%以上)代わりに、有給の休暇(代替休暇)を与えることができるようになりました(労働基準法37条3項)。
 ただし、一部中小企業には、60時間超の50%以上割増しが猶予されていますので、当然、この代替休暇についても当分の間、猶予されます。

月60時間を超える時間外労働
 1か月の起算日から時間外労働時間数を累計していった時間です。この60時間には、法定休日 (たとえば日曜日)に行った労働は含まれませんが、法定外休日 (たとえば土曜日)に行った法定時間外労働は含まれます。
 1か月の起算日は、毎月1日、賃金計算期間の初日、協定の期間の初日などが考えられます。

 代替休暇の時間数の算定方法
  代替休暇の時間数と換算率は次のように計算します。

 代替休暇の時間数=
  ([1か月の法定時間外労働時間数]-60)×換算率

 換算率=
  [代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率]-[代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率]


 代替休暇を取得しなかった場合に支払う割増賃金率が1.50
 代替休暇を取得した場合に支払う割増賃金率が1.30
 この場合の換算率は、0.20(=1.50-1.30)となります。

代替休暇の単位
 まとまった単位で与えることによって労働者の休息を確保できるように、代替休暇は、1日または半日の単位で与えることとされました。定めた単位に満たない端数の時間がある場合は、他の有給休暇と合わせて与えることもできます。

代替休暇を与えることができる期間
 長時間労働をした労働者の休息確保が目的ですので、近接した期間内(2か月間以内)に与える必要があります。

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