経営者をトラブルから守る法律知識と手続き(第2回)

補助金と助成金、正しく知っていますか。

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 経営者にとって、資金の確保は重要な課題です。もちろん、国との関係についても、もっぱら税金を納める側ではなくて、お金が流れてくる立場にいる方がよい。しかし、小さな民間企業が国から仕事を引き出すといっても、どうやって?
 いわゆる入札のほかにも、公共から資金を得てゆく方法はあります。それが今回ご紹介する補助金であり助成金です。特に、これまで利用してきたことのない事業者さんのために、補助金・助成金を得るまでの流れについて、初歩のガイドをしてゆきます。

今回のテキスト

『社長!会社の資金調達に補助金・助成金を活用しませんか!?』(小泉昇・自由国民社刊)

補助金とは

補助金はもらえるお金

 補助金は、国や自治体などが政策を推進するために政策目的に合った取り組みを支援するために提供する、返済する必要のない資金です。融資のように担保や保証人を求められることもありませんし、金利もありません。つまり、もらえるお金なのです。

 ただし、誰でも簡単にもらえるわけでもありません。申請書を書いて提出し、場合によっては面接も受けなくてはいけません。申請書を書く手間はかなりなものですし、独特のノウハウも必要です。長い時間と労力をかけて申請書を書いて提出しても、採択されるとは限りません。補助金の倍率は数倍以上が多く、採択されるよりも落ちる可能性の方がずっと高いのです。
 また、採択されたら、すぐにお金がもらえるわけでもありません。補助金は後払いが原則なので、まずは自己資金(借入でも良い)で補助事業を実施し、後から清算払いを受けることになりますので、自己資金も必要です。
 さらに、採択された後、補助金の支給を受けるまでには、かなりの量の書類を作成・提出しなければなりません。
 このように、補助金は有利な資金である反面、制約が多いのも事実です。制約の多さを嫌って、補助金なんていらない、という声も聞かれるほどです。
 でも、それで良いのでしょうか。中小企業を取り巻く環境は、厳しくなる一方です。せっかく国などが手を差し伸べてくれているのに、利用しないのはもったいないと思いませんか? 補助金の活用いかんで、企業の競争力にも差がつくでしょう。事実、一部の企業は、繰り返し補助金を使って競争力をつけています。
 さあ、あなたも、補助金活用のコツをつかみ、補助金を使った革新を実現してください。
それぞれの分野ごとに、細かい様々な補助金があります。補助金の数は、誰も数えた人はいないのですが、1,000や2,000はありそうです。ぜひ自分で探してみてください。

補助金と助成金の違い

 補助金と助成金には、元々の意味の違いはほとんどありません。しかし、経済産業省が主に補助金と言い、厚生労働省が助成金という言葉を使っているため、経済産業省系のような特徴を持つ資金を補助金、厚生労働省系のような特徴を持つ資金を助成金と呼ぶことができます〈本稿ではその用法にしたがいます〉。
 そして、経済産業省系の補助金と厚生労働省系の助成金では、実は、根本的な違いがあります。

 最も大きな違いは、助成金がある一定の条件を満たせばほぼ必ずもらえる資金であるのに対して、補助金はある政策を推進する最も良い提案に限ってもらえる資金である、ということです。どちらも審査はありますが、助成金の審査が形式的な要件を満たしているか否かの審査であるのに対し、補助金の審査は、形式要件を満たしているか否かはもちろんですが、基本的には提案の中身の審査になります。申請者(提案者)が全員採択されるということは基本的にはなく、倍率も数倍から数十倍以上になることもあります。つまり、補助金は、落ちることの方が多いのです。難易度が全く違う(助成金は形式要件だけなので、難易度とは言えないかもしれませんが)ことはおわかりでしょう。
 また、ここでの助成金は厚生労働省の提供ですから、雇用の増加・安定や能力開発が主な対象となりますし、経済産業省の補助金は産業の振興が狙いとなります。公募期間も異なり、厚生労働省の助成金が通年など長い期間で募集しているのに対して、経済産業省系の補助金は、募集開始から締切までが数週間と短いのが普通です。

 このような違いがあるため、一般的には助成金の申請は社会保険労務士や行政書士が扱うことが多いようですが、補助金は中小企業診断士やコンサルティング会社の領域になります。

 表は、典型的な厚生労働省の助成金と経済産業省の補助金を比較したものです。

 ここで気をつけなければならないことは、例えば経済産業省系で補助金の特徴を持つ制度でも助成金という名称になっているものがあったり、その逆もあるということです。

委託費とは

 ちなみに補助金と類似のものに、委託費があります。委託費とは、文字通り委託のための費用です。つまり、委託費をもらうとは、国から事業を委託されることを意味します。

 形式上の違いはさておき、補助金と委託費の最も大きな違いは、補助率でしょう。補助金では100%補助ということは普通はありませんが、委託費は100%です。つまり、自己負担がゼロなのです。

補助金の公募から採択まで

補助金の募集期間は、一般的に数週間(1か月前後)程度です。中には、もっとずっと短い場合もありますので、常に注意していないと、いつの間にか募集期間が終わっていた、などということにもなりかねません。

 補助金によっては、公募開始の前後に説明会を開催する場合がありますが、基本的に話す内容は書いてあることと同じです。説明会に出席しなくても申請はできますし、審査に影響することもありません。

 申請から採択決定までは、短い場合で1か月、長い場合は半年近くにもなることがあります。採択決定までの期間は事前に通知または説明がありますが、予定より遅れている場合は遠慮なく問い合わせましょう。ただし、審査の進捗状況については、基本的に問い合わせはできないことになっています。

助成金とは

助成金の種類

 ここで解説するのは、厚生労働省系の雇用関係助成金のことです。名称は「○○助成金」となっていても、中身が研究開発型であるものなどは、上記の「補助金」に準じたものと理解して下さい。

助成金がもらえるのは、例えば以下のようなときです。

①人を雇い入れたとき
 ・就職が困難な人を雇い入れたとき
②雇用を維持したとき
 ・従業員を休業・出向させたとき
 ・定年を引き上げたとき
③失業者が自立したとき
 ・創業したとき
④雇用環境を改善したとき
 ・育児と雇用の両立を企業が支援したとき
 ・パートタイム労働者の待遇を改善したとき

他にもありますが、基本的に全て雇用確保が最終目的であるのが特徴です。

 助成金は頻繁に制度が変わります。最新の情報を厚生労働省のサイトで確認するのが確実です。
厚生労働省 > 行政分野ごとの情報・雇用 > 分野別施策紹介・助成金
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/index.html

 基本的には、このサイトからのリンクで情報は全て揃う(厚生労働省が提供しているもののみ。他に、地方自治体が提供しているものもあります。)ので、補助金と比較して探しやすいと言えます。数もそれ程多くはないので、根気さえあれば全てを順番に見ていくことにより、自社が利用できる助成金を探すことができるでしょう。

助成金の申請から受給まで

 助成金をもらうためには、当然ながら申請しなければなりませんが、多くの助成金は、実施計画の申請と支給申請の2段階の申請が必要です。(実施計画の申請が不要な助成金も多くあります。)

 上の流れを、補助金の流れと見比べてください。補助金は、計画申請後に「採択」という大事なイベントがありました。助成金には、それがありません。これは、助成金が、条件を満たせば基本的には必ずもらえるお金だからです。

助成金をもらうための基本条件

 補助金との違いは、まだあります。それは、財源です。助成金の財源は、企業が支払っている雇用保険料です。ですので、利用できる企業も、基本的には雇用保険の適用事業の事業主である必要があります。また、以下のような企業は、助成金によっては受給できないことがありますのでご注意ください。
①雇入れの前後6か月間に事業主都合による解雇した、または特定受給資格者となる離職者を3人超、かつ被保険者数の6%超発生させた企業。
②2年間を超えて労働保険料を滞納している企業。
③過去3年間に助成金を不正受給し、またはしようとした企業。

 助成金の申請書類の作成等は、自分で行うことももちろんできますが、社会保険労務士等に依頼するのであれば、相手が助成金の申請が得意かどうかを慎重に見極めてください。社会保険労務士だからと言って、助成金に詳しいとは限りません。

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