2019.8.26 (Mon)

自治体ならではのICT活用(第2回)

自治体の興味を引くRPA。実証実験が盛んに

posted by 岩元 直久

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 RPAへの注目が一段と高まっています。RPAとは、Robotic Process Automationの略で、定形業務をロボットに任せる技術です。といっても、人間の形をしたロボットのことではなく、パソコン上のソフトウェアやウェブサービスなどを使って、人が操作する業務をソフトウェアのような自動実行できるようにすることを指します。目に見えないソフトウェアのようなロボット、それがRPAです。

 パソコンを使って人手で行っている定形業務は、一般企業でも自治体や各種の団体でも、数多くあります。こうした業務を自動的にソフトウェアロボットであるRPAに任せることで、さまざまな面で効果が期待できます。生産性の低い定形業務に追われる従業員や職員の業務効率向上はもちろん、RPAの導入で業務を削減して生み出した“時間”をよりよい住民サービスの提供に使うこともできます。人材確保の難しさに対しても、RPAで業務効率を高めることで対応できる可能性があります。生産性向上や働き方改革から超少子高齢化まで、多くの社会課題の解決に役立つと見込まれているのです。

銀行や大企業が先行、自治体でも実証実験が盛んに

 RPAは、いわゆる言葉先行の「バズワード」の段階を抜け出して、実際に企業や自治体で実証実験や、本格導入が進んでいます。国内のユーザー企業を対象にした調査「第24回 企業IT動向調査2018(17年度調査)」(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)では、売上高が1兆円以上の企業において「RPAを導入済み」が4分の1、「試験導入中・導入準備中」「検討中」までを合計すると95%以上になるほどです。

 また同じ調査の結果を見ると、業種別では金融機関の普及が目立ち、「導入済み」「試験導入中・導入準備中」「検討中」が約7割となっています。メガバンクによるRPAの導入のニュースは多くの記事になりましたから、読者の皆さんの記憶にも新しいことでしょう。このようにRPAはすでに、一部の企業が実証するステージから、本格的な業務で活用するステージに差し掛かっているといえます。

 こうした中で、自治体でもRPAの導入に向けた動きが盛んになってきています。ここ数年は、地方自治体がRPAの導入効果を測定するために、多様な業務で実証実験を始めるようになったことが注目点です。

 いくつか実例を見てみましょう。福島県会津美里町は2019年2月から4月にかけてRPAを利用した業務効率化の実証実験と効果検証を行いました。RPAを適用した定型業務は「源泉徴収10日支払業務」「発令情報転記業務」「期末勤勉手当転記業務」です。対象とした3つの業務で、それぞれ19時間以上の業務削減効果が期待できる結果が確認できました。

 同じ福島県の県庁所在地である福島市でも、同年2月から5月にかけてRPAの実証実験、効果検証を行っています。福島市が対象としたのは、「市政だよりお知らせ入力業務」「治療材料給付券支払業務」「治療材料給付券更新申請書入力業務」です。RPAの自動処理による削減時間と削減率は、平均10.6時間で36%の効果が期待できるという結果が得られました。

 こうした業務はどの自治体でも行っているだけに、得られたRPA実証の効果を認める自治体に対して横展開が可能で、業務効率化に寄与すると考えられます。

AI-OCRとRPAの組み合わせが業務削減に効果

 このように自治体でのRPA導入への機運が高まる中で、もう1つ注目しておきたいトレンドがあります。それが、RPAとAI-OCRを組み合わせたソリューションです。AI-OCRとは、OCR(光学的文字認識)にAI(人工知能)を適用した技術で、従来のOCRよりも格段に高い精度の文字の読み取り、認識が可能になりました。このAI-OCRをRPAと組み合わせることで、自治体に残っている「人手がかかる業務」の課題を解決できると見込まれているのです。

 自治体の業務には、手書きの申請書など、数多くの紙の書類が使われています。これまでは職員がパソコンに向かって1つひとつ文字を読み取りながら入力する必要がありました。人手の作業では時間効率が高められないですし、繰り返し作業に伴うミスも防げません。スキャンした書類をAI-OCRで高精度に読み取り、デジタルデータとなった情報をRPAで適切にシステムに入力するようにすれば、業務効率の向上とミスの低減を同時に実現できるわけです。

 AI-OCRとRPAを組み合わせたソリューションの実証実験は、自治体で多く取り組みが始まっています。例えば千葉県千葉市では、AI-OCRで帳票をデジタル化してRPAで千葉市税務情報システムへ自動入力することで業務効率化を図る実験を行っています。対象としたのは、千葉市役所課税管理課の個人住民税と法人住民税の業務で、合計で年間8万件を超える処理を行っているものです。この実験では、AI-OCRの帳票を読み取る精度の検証と、AI-OCRとRPAによる職員の業務時間の削減効果を測定しました。

 効果は非常に大きなものでした。現状個人住民税業務では年間1300時間超をかけて帳票内容を読み取り、システムに投入していましたが、本実証実験の結果、AI-OCRとRPAの活用により年に換算すると約602時間もの削減効果が期待できる結果となりました。業務フローの見直しやRPAのシナリオ精度向上の改善を施した本運用時には、年間1283時間の業務削減が見込まれると予想しています。

 千葉市以外にもAI-OCRとRPAを組み合わせた実証実験を行う自治体は多くあります。北海道では、北海道や函館市など9つの道市町村が給与支払報告書や要介護認定に関する書類の読み取りからパソコン作業を自動化し、最大で9割の自動化効果が得られています。東京都多摩市では、RPA実証の中で住民税に関する業務を対象にAI-OCRとRPAを適用した自動化の検証を行っています。また、茨城県つくば市や神奈川県横浜市など6市も書類の読み取り精度の確認の実験を実施し、正読率が約93%という高い精度を得ています。

 RPAによるパソコン業務の自動化だけでなく、AI-OCRによる精度の高い紙の用紙の読み取りを組み合わせるソリューションは、自治体の業務効率向上や生産性向上への大きな力になりそうです。

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岩元 直久

岩元 直久

日経BP社でIT、ネットワーク、パソコンなどの分野の雑誌、ウェブ媒体の記者、デスクを歴任。モバイル分野については、黎明期から取材・執筆を続けている。フリーランスとして独立後は、モバイル、ネットワークなどITを中心に取材・執筆を行う。

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