2019.5.27 (Mon)

自治体のICT活用の勘所(第1回)

いざ災害発生。「建物被害認定調査」をICTで迅速に

posted by 岩元 直久

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷

 突然の自然災害に襲われてしまった場合、地方自治体は災害の応急措置が終わるとすぐに住民の生活再建のための支援に奔走することになります。地域が被災した場合に、自治体はどんな業務をどのように進めていったらいいのでしょうか。災害による被害を経験していない自治体では、実際のところよく分からないというのが実情かもしれません。ポイントは「迅速さ」です。

 まず初めにすることは、実際に建物の被害を調査する「建物被害認定調査」です。住宅の屋根や壁などの被害の全体に占める割合によって、50%以上は「全壊」、40%以上50%未満は「大規模半壊」、20%以上40%未満は「半壊」と定められています。

 この被害認定がその後の「り災証明書」発行の基になるので、速やかに実施しなければなりません。被害認定調査は研修を受けた調査員(自治体職員)が、原則として2人以上で実地調査することになっています。

過去の被災自治体の知見、連携を最大限生かす方法

 建物被害認定調査では、調査票に必要な状況を記録して、被災者台帳として管理していきます。この調査票は、内閣府が調査指針として示している内容を基準にするとよいでしょう。

 膨大な事務処理が伴う被災者生活再建支援の業務をスムーズに進めるには、ICTシステムの助けが不可欠です。ICTシステムによっては、内閣府の調査指針に対応した上で、過去の被災地で活用されたノウハウを生かした調査票になっているケースもあります。

 そうしたICTシステムを使えば、表示されるフローチャートに従って情報を登録していくだけで、被害判定が誰でも間違いなくできます。また内容が標準化されているため、自治体内の多くの職員が建物被害認定調査に関われるだけでなく、他の自治体からの応援を受けやすいといったメリットもあります。

 大規模な災害の場合は調査対象が膨大な数になります。被災した自治体では、建物被害認定調査のための調査員を確保することがなかなか難しいのが現実です。そこで他の自治体から応援の職員が派遣される場合があります。その際、標準化された調査票の利用や、多くの自治体で導入されているICTシステムを採用していれば、対応できる調査員を確保しやすくなるでしょう。過去に被災した自治体の職員に応援に入ってもらえれば、調査の迅速化にもつながります。

役立つシステム選びのポイントは「調査票登録の柔軟さ」

 さらに、現地調査ができたとしても紙の調査票に記録したデータを整理しなければなりません。被災者台帳として管理し、適切な支援を行っていく必要性を考えると、情報のデータベース化が欠かせません。

 建物被害認定調査とひと口にいっても、小規模な調査から大規模な調査までその対応の仕方には大きな違いがあります。そのため、被災者生活再建支援のために導入したICTシステムは、規模が異なる調査に柔軟に対応できなければなりません。

 大規模な災害では、大量の調査票をまとめて自動的にスキャンしてデータ化していくような仕組みが求められます。中小規模の災害なら、個別の調査票からデータを登録する仕組みで事足りる場合もあります。さらにタブレットやスマートフォンといったモバイル端末を活用した調査を行い、現地で調査票の項目に相当するデータを登録してしまう方法で、データ入力の省力化を図る方法もあります。

 こうした多様なデータ登録手法を災害の規模に応じて臨機応変に使い分ければ、生活再建の初動対応となる調査票の迅速なデータ化が可能になり、スピード感のある被災者生活再建のサービスの提供にもつながるのです。

研修や訓練などでシミュレーションすべし

 迅速に適切な対応を取るには、平時の研修や訓練といった準備が必要です。

 事前の研修や訓練では、自治体職員が住民役と職員役に分かれて、被災者の生活再建支援のための業務フローを体験しておきましょう。建物被害認定調査の受け付け、り災証明書の発行手続き、支援内容の説明ブースでの対応、建物被害認定調査に住民が納得しなかった場合の二次調査の対応――こうした業務を事前にシミュレーションして体験しておく準備が求められます。

 事前の研修や訓練を、いかに適切に実施しておくかが、発災時の混乱の中でよりスムーズに業務を遂行するためのポイントになります。ソリューションによっては、そうした研修や訓練がメニューに入っている場合もあるので、導入時に比較・検討するとよいでしょう。

事例記事

震災の混乱の中で新システム導入。北海道むかわ町の挑戦

2018年9月に発生した、北海道胆振東部地震。むかわ町は災害対策システムの導入を検討していた矢先に被害に見舞われました。震災の混乱の中で、導入されたシステム、その導入・利用法を紹介します。

記事の全文(続き)を読む

事例記事

万一の災害に備えて。平時より準備を進める新潟県の取り組み

避けられない地震や豪雨などの災害。新潟県は被災者支援業務を迅速に行うために、県内24の市町村と共同で、ICTを活用した災害対応の仕組みを整えています。

記事の全文(続き)を読む

NTT東日本の取り組み

被災者への公平・迅速な支援を実現するクラウドサービス

万一災害が起きてしまった場合の被害情報の集計や、り災証明書の発行など、自治体に求められる被災者への公平かつ迅速な支援を、少ない業務負担で実施できるとともに、職員の方々の負担を軽減します。

NTT東日本の商品・サービスを見る

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷
岩元 直久

岩元 直久

日経BP社でIT、ネットワーク、パソコンなどの分野の雑誌、ウェブ媒体の記者、デスクを歴任。モバイル分野については、黎明期から取材・執筆を続けている。フリーランスとして独立後は、モバイル、ネットワークなどITを中心に取材・執筆を行う。

メルマガ登録


スペシャルインタビュー


成功企業の戦略


クラウドソリューション

ページトップへ