2019.11.27 (Wed)

自治体の被災者支援(第4回)

被災時に威力を発揮、「全国共通」被災者支援システム

posted by 岩元 直久

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 地震、台風、水害――。100年に一度といわれる大規模な災害が、毎年のように日本列島の各地を襲ってきます。災害は、いつどこに襲いかかるか分かりませんし、被災してしまった地域の自治体は待ったなしで被災者生活再建支援の取り組みを始める必要があります。被災者に対する支援に“やり直し”はききません。一度きりの対応を、確実に素早く、公平公正でありながらスムーズに行うという難しい取り組みが求められます。

 被災者生活再建支援のための自治体の業務には、さまざまなボトルネックがあります。京都大学防災研究所巨大災害研究センターおよび新潟大学危機管理室災害・復興科学研究所を中心にした研究では、以下の4つのボトルネックを挙げています。

・建物被害調査員を確保できない
・調査票をデータ化するのが大変
・り災証明書発行に時間がかかる
・支援対象者の特定や公正公平な支援が困難

 これらのボトルネックを払拭し、多様な業務を一元的にカバーできるようにするためには、情報システムの活用が効果的です。そこで産学官が共同して被災者生活再建支援のためのシステムの研究および開発が始まりました。

 開発したシステムは、2004年の新潟県中越地震の際に新潟県小千谷市での利用をはじめ、被災した各地の自治体に利用してもらうことで、研究者と共同で災害現場における実証、改善を進めてきました。システムは、被災地の自治体の直接の声はもとより、内閣府が示した被災者生活再建のための調査指針の内容にも対応しています。全国の自治体の生の声を聞き、国の指針に沿ったシステムですから、全国共通の標準化された業務フローで利用できるパッケージになっています。

すでに200を超える自治体が導入

 このシステムは、NTT東日本が「被災者生活再建支援システム」として営業活動を行っています。実に、すでに200を超える自治体で実際に導入が進んでいて、人口カバー率は20%にも上ります。

 「被災者生活再建支援システム」は、4つのボトルネックに対応するために、建物被害認定調査を分かりやすくスムーズに進める機能や、調査結果のデータ化機能、り災証明書の発行を迅速に発行する機能、さらに被災者台帳で多様な支援を一元的に管理できる機能を備えています。その上、実際に被災した自治体で運用したノウハウや、国の新しい指針を基に、ブラッシュアップも続けられています。自治体が求める機能が充実しているだけでなく、被災地で利用された実績が数多くあることは、これから被災者生活再建支援のためのシステムの導入を検討する自治体にとって、力強い後押しになるでしょう。

 全国共通パッケージとして提供されているNTT東日本の「被災者生活再建支援システム」は、被災地に対する自治体同士の応援・受援の関係の側面からも大きな効果があります。

 実例を見てみましょう。応援・受援の関係がうまく機能したのが、熊本県御船町と北海道むかわ町の両自治体の間でのことでした。御船町は、2016年4月の熊本地震で被災し、システムの必要性を強く感じてNTT東日本の「被災者生活再建支援システム」を導入しています。一方、むかわ町でも災害時の対応のためのシステムの検討を進めていたさなかの2018年9月に、北海道胆振東部地震により被災されました。御船町とむかわ町を含む2市2町は「にっぽん恐竜協議会」で協定を結んでいることから、御船町の職員がむかわ町の応援に駆けつけました。むかわ町では、事前の検討と御船町の利用実績から、NTT東日本の「被災者生活再建支援ステム」を導入することになったのです。

被災地の混乱の中で応援・受援体制が奏功

 被災地では、生活が成り立たなくなった住民が苦心して生活するだけでなく、自治体にも多くの負荷がのしかかります。むかわ町でも大規模な停電で1週間ほどパソコンが使えず、被災者支援のための業務を進めることができなかったほどです。そうした中で、むかわ町が導入した被災者生活再建支援システムは、自治体がサーバーなどを用意せずに利用できるクラウド版の「Bizひかりクラウド 被災者生活再建支援システム」でした。

 ここで、御船町とむかわ町の連携が大きな力になりました。御船町は、同じく「被災者生活再建支援システム」を利用して、実際に熊本地震の被災者生活再建の支援に役立てています。全国共通パッケージの同じシステムですから、御船町の職員がむかわ町の職員にシステムの利用方法を教えたり、実際の業務の進め方を支援したりすることができました。被災地では自治体の職員にも余裕はありませんし、初めての被災対応で混乱することも多くあります。そうしたときに、被災対応の経験者である自治体からの応援をスムーズに受けられるのは大きなメリットです。むかわ町のケースでは、むかわ町の頑張りを御船町の応援が後押しする連携がうまくいきました。全国共通パッケージである「被災者生活再建支援システム」が、九州と北海道という遠距離で相互作用をもたらしたのです。

 被災者生活再建支援システムは、自治体向けのソリューションです。単体の自治体が導入して効果があるかどうかという視点だけでなく、自治体同士の応援・受援まで含めた視点でシステムの選定、導入をすることも「いざというとき」に役立つわけです。これを多くの自治体にわたる「応援・受援の輪」につなげれば、災害時の相互の支援がよりスムーズになるでしょう。

 NTT東日本の被災者生活再建支援システムは、国や自治体のシステムのクラウドシフトが進む中、御船町やむかわ町が導入したクラウドサービスの「Bizひかりクラウド版」が全国に広がっています。

 Bizひかりクラウド版は2018年に料金の改訂を行い、平常時のコストを極力抑えながら、災害時には大規模にシステムを利用できるような導入しやすいサービスとして提供しています。

 全国の多くの自治体が被災者生活再建支援の応援・受援の輪をつくり、災害時の業務を連携して支援する。そうした自治体の業務の支援が、全国共通パッケージである「被災者生活再建支援システム」の導入で具体化することができるのです。

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岩元 直久

岩元 直久

日経BP社でIT、ネットワーク、パソコンなどの分野の雑誌、ウェブ媒体の記者、デスクを歴任。モバイル分野については、黎明期から取材・執筆を続けている。フリーランスとして独立後は、モバイル、ネットワークなどITを中心に取材・執筆を行う。

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