2019.5.27 (Mon)

自治体の被災者支援(第1回)

被災対応でクレームの嵐。住民支援は事前準備がカギ

posted by 岩元 直久

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 大地震、台風や集中豪雨、大雪、火災といった自然災害が全国各地を襲い、地域住民の暮らしに大きな傷跡を残しています。同時に、自然災害の発生は被災した住民を支援する地方自治体にも突然の大きな負担を強いてきます。

 災害時の地方自治体には、事前の情報収集・防災対策から災害発生時の対応、直後の応急措置、被災者への支援、そして国や都道府県、警察や消防など関係機関との連携まで、多様な対応が求められます。発生した災害に適切に対応して、被害を最小限に食い止める即時の作業は最も重要な業務になるでしょう。災害発生時の危機管理体制の確立は地方自治体に不可欠です。

 一方で、東日本大震災をはじめとした大規模災害後には、数年から10年以上といった長期にわたり、復旧や復興のための業務が継続することになります。被災地の住民の支援という側面だけを見ても、被災直後の応急措置から生活再建までの間には、長期間の支援が求められます。地方自治体には、災害発生時を乗り切るための災害対策だけでなく、その後の長期間の住民支援を見越した災害対策が不可欠なのです。

人手不足が支援漏れにつながる

 災害が起きると、地域の住民の生活レベルは住宅の被災やライフラインの寸断などで、苦しい生活状況を余儀なくされるでしょう。そうした中で地方自治体は、住民の生活再建支援に向けてさまざまな業務を庁内横断的に行っていきます。生活再建業務がスムーズに進まないと、苦しい被災生活が長引きます。住民からのクレームの嵐につながると、自治体全体が批判される可能性もあります。地方自治体は生活再建支援の対策を素早く、かつしっかりと講じなければならないのです。

 被災住民への生活再建業務の1つに、住宅に関する支援があります。住宅が壊れたりして生活が維持できなくなった人に、見舞金の支払い、税金などの減免・猶予の措置、壊れた住宅の補修、新しく建て直すときにかかる費用の融資などによって手を差し伸べることなどです。しかし、それらには現地調査によるり災証明書の発行状況、被災者台帳などの情報が必要となります。

 もちろん、災害対応の業務は住宅再建支援に限られているわけではありませんから、庁内の多くの部署と連携しながら情報を適切に扱って業務を推進する必要があります。

 実際に過去の災害発生時には、現地調査の人手不足などから、り災証明書の発行が遅れたり、支援漏れが発生したりといったトラブルも生じています。こうした事例からは、いつ起こるか分からない災害に向けて、準備を常に整えておかなければならない必要性が読み取れます。

外部の力を上手に利用すれば支援がスムーズに

 災害対応で発生する多様な業務をスムーズに進める1つの方法として、ICTの活用が挙げられます。ICTの活用によって、地方自治体の災害対応、生活再建支援などの業務にまつわる課題を解決できます。

 生活再建支援の業務では、紙の調査票で収集した大量のデータを基に、り災証明書を発行し、被災者台帳を作成・管理しなければなりません。こうした業務を人海戦術でこなしていては、迅速な対応が実現できません。調査票をまとめてスキャンして、データ化した上で一気にシステムに登録するなど、ICTを活用すればデータ登録の手間を大幅に削減できます。紙の調査票の代わりにタブレットやスマートフォンのアプリで被害情報をその場で登録するような仕組みを使えば、さらに負担が軽減できます。

 さらに、被災者台帳管理システムをさまざまなデータと連携していけば、資金的な支援だけでなく健康相談なども含めた広範囲にわたる行政サービスを一元的に提供できるようになるでしょう。

 災害時の地方自治体にとってICTとは、突然の災害対応業務の支援から、被災者が生活を再建するまで継続的に発生する業務までを、まとめて支援するツールになります。それだけに準備も一朝一夕では整えられません。数年から10年以上といった長期にわたる生活再建支援業務をICTによってスムーズに遂行できるように、平時の準備が大切です。災害大国である日本の自治体にとって、被災住民の長期的支援は避けられない課題だといえます。

 とはいえ、一自治体の職員だけですべてに対応するのは難しい実情があります。被災対応トレーニングや他自治体との連携支援まで提供するICTサービスもあります。外部の力を上手に利用するとよいでしょう。

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岩元 直久

岩元 直久

日経BP社でIT、ネットワーク、パソコンなどの分野の雑誌、ウェブ媒体の記者、デスクを歴任。モバイル分野については、黎明期から取材・執筆を続けている。フリーランスとして独立後は、モバイル、ネットワークなどITを中心に取材・執筆を行う。

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