2019.3.27 (Wed)

業務効率化が急務なワケ(第3回)

業務効率化特効薬、RPA導入のコツ

posted by 林 達哉

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 このところビジネスシーンで大きな話題になっているRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)。オフィスワークをロボットが人に代わって行う仕組みは、ビジネスパーソンの働き方を根本から変えるものとして注目を集めています。

 RPAは「パソコン上で仕事をこなすロボット」として知られています。ロボットといっても人の形をしているわけではなく、パソコン上で動くソフトウエアを指します。「システム起動→ファイルを開く→データを入力する→メール送信する→終了」といった、人が行う一連のパソコン操作を自動化する仕組みがRPAです。

 では、なぜRPAが大きな盛り上がりを見せるのでしょうか。何といっても大きいのは「働き方改革」で求められる時間外労働(残業)削減の手段として有効だからです。実際に、早くからRPA導入に取り組んできた金融機関で、事務作業の効率化が実現したというニュースが大きく報じられました。「RPAで残業カット」「仕事が楽になる」といった部分が強調され、他業種でも一気に導入検討へ勢いが加速しました。

 また、導入コストが比較的安価なRPAツールが増えており、中小企業でも導入が進みつつあります。ICTの専門知識がなくても容易に扱えるRPAツールもあり、企業規模にかかわらず活用され始めています。

 なお、パソコン操作の自動化は、RPAが登場する前から存在していました。エクセルのマクロが代表例です。マクロはエクセルの作業しか自動化できないのに対し、RPAでは複数のアプリケーション間での作業を自動化できます。

 RPAが評価される主なポイントを挙げてみましょう。
(1)人が操作している事務作業を自動化
 複数のアプリケーションをまたがった操作でも自動化できる
(2)運用中のシステムをそのまま使用可能
 システムの更新・入れ替えを行う必要がないため、導入のハードルが低い
(3)高度なプログラミング知識が不要
 操作手順(シナリオ)をフローチャート形式で並べて自動化するツールもある

RPAの活用フローは4段階

 これからRPAを活用しようとする場合、どのような手順で進めていけばいいのでしょうか。まず気を付けたい点は「RPAは稼働までに時間がかかる」ということです。業務システムによっては導入当日から稼働開始という場合もありますが、RPAは活用までにいくつかのフローを経るのが一般的です。具体的な流れを示します。

【RPA活用の4段階】
(1)事前準備
 現在の業務内容を分類・整理し、ロボットにどんな仕事をさせるかを決める
(2)ソリューション選定
 導入の目的や規模、予算に適したソリューションを選ぶ
(3)ロボット作成
 業務の手順をシナリオ化して、ロボットに覚えさせる
(4)運用
 正常稼働を確認するとともに、継続的な改善を行う

 これまでにRPAを導入した企業の事例を見ると、最初の「業務内容把握」の段階でシンプルな業務を選び、スモールスタートするケースが多くなっています。オフィスワークには人それぞれのルールがあり、ロボットの動作を統一しにくい状況があります。RPAを提供するベンダー各社は、これらの課題を解決するヒアリングを実施し、自動化をめざす仕事の「見える化」をRPA導入前に行っています。

 また、他のICTツールの活用から、RPA導入の効果に気づく場合があります。例えば、AIを活用したOCR製品で手書き伝票をテキスト化するツールがあります。このようなICTツール活用の延長から業務全体の見える化を進め、RPA導入に至るケースもあります。

最適なRPAツールの選び方

 RPAを構築するためのソリューションは、ベンダー各社から数多くの製品が提供されています。導入に当たっては「どれを選ぶか?」で迷うところです。

 RPAの種類は大きく2つに分けられます。個々のパソコンにインストールして使用する「クライアント型」と、複数のパソコンをまとめて管理する「サーバー型」です。低コストで導入できるクライアント型はスモールスタートに向いています。一方、将来の拡張性や管理のしやすさではサーバー型に強みがあります。企業は導入規模やロボットに求める機能を軸に、まずはクライアント型かサーバー型かを確認するとよいでしょう。最近では、両者の特徴を併せ持ったクラウドソリューションも登場しています。

 ICTの専門人材が少ない場合、できるだけ単純な作業から自動化を進めるとよいでしょう。スモールスタートにはクライアント型のほうが安価で適しているケースが多くなっています。

 RPAを提供するベンダーは国内・海外合わせて100社以上あり、現在も増え続けています。2000年代初期から自社開発のRPAツールを提供している会社をはじめ、業務システムの一分野として提案を行うSIer(システムインテグレーター)、さらにITコンサルティング会社やITサービス事業者も続々参入しています。1つのベンダーが複数のツールを提供している場合も多くあります。選定に当たっては、複数のRPAツールを検討しやすい状況です。付き合いのあるベンダーも含めて、いくつかの導入支援業者に相談するとよいでしょう。

RPA活用を成功に導く

 RPA活用の成否は、先ほど述べたRPA活用4段階の「運用」で決まります。RPAに操作手順を覚えさせる「手間」がかかります。せっかく導入しても、手順に誤りがある状態では使い物になりません。また各ベンダーのサポート体制も欠かせない条件です。事前にどんなサポートプランが提供されているか(業務の見える化支援、ロボット開発支援、コンサルティングなど)を、十分に確認しましょう。 最近は、ツールとサポートがワンパッケージになったソリューションも出ています。

 すでにRPAを導入済みという企業からは自動化によるメリットだけでなく、いくつかの問題点が指摘されています。例えば、導入したものの正しく動作せず、そのまま放置されている“野良ロボット”の存在や、自動化されることで仕事がブラックボックス化してしまい、むしろ人材育成の妨げになるといった問題点が挙げられています。ロボットも新入社員教育と同様に、じっくり根気よく育てる姿勢が大切です。

 また、もう1つ無視できない問題に「人間の仕事の質向上」があります。一度起動させれば24時間休みなく働くロボットは、業務効率化に寄与します。ですが、それがそのまま製品・サービスの質や顧客満足度向上に結びつくわけではありません。導入に先立って業務フロー全般を見直し、人間にしかできない仕事は何なのか、把握する必要があります。RPA活用で生まれた余剰時間を使って、人間が仕事の質や業務効率を上げられるかどうかで導入効果は変わります。戦力を何に注力させてどんな効果を見込むか、RPA活用の一歩進んだ目的も検討すべきだといえるでしょう。

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林 達哉

林 達哉

出版社勤務を経て独立。メディアコンテンツ制作、マーケティングに携わる傍ら、IT、ビジネス等の分野で執筆活動を行う。

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