2019.3.26 (Tue)

生徒のために学校が変わる(第1回)

このままではマズい。教員負担、新学習指導要領で増

posted by 山本 貴也

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 2016年の中央教育審議会の答申、その後の改訂を経て、新しい学習指導要領が小学校から順次スタートします。小学校は2020年度、中学校は2021年度、高等学校は2022年度から全面実施の予定です。

 学習指導要領とは、全国のどの地域で教育を受けても一定水準の教育を受けられるように定められる基準のこと。各学校は、この学習指導要領に基づいて教育課程(カリキュラム)を編成します。学習指導要領は、ほぼ10年に一度改訂されます。前回の改訂では「脱ゆとり」をめざして、授業時間の増加などが盛り込まれたのを覚えている方も多いでしょう。

 今回の新しい学習指導要領で強調されているのが「生きる力」です。予測困難な時代にあっても自ら学び、自ら考え、行動して生きる力を育むことをめざします。その生きる力を、学ぶことに興味や関心を持つ「主体的な学び」、子ども同士の協働や、教職員や地域の人との対話などを通じた「対話的な学び」、知識を相互に関連付ける「深い学び」を通して実現すると謳っています。ただ、その半面で懸念されるのは教員の負担増です。

小学校は「外国語」増、高校は科目構成激変

 負担増になる要因の1つに、科目やカリキュラムの変更が挙げられます。小学校では、グローバル化に伴い「外国語(英語)活動」を現行の5・6年生から3・4年生に早め、5・6年生で正式な教科とすることになりました。具体的には、3・4年生で外国語活動が35時間、5・6年生で外国語が70時間、設けられます。これによって6年間の標準授業時数は、現行の5,645から5,785に増加します(事業時数は1単位45分)。

 高校では教科・科目構成が激変します。大きく変わるのが「国語」「地理歴史」「公民」ですが、他の分野でも変更があります。まったく変わらないのは「保健体育」と「芸術」だけといえば、そのインパクトが分かるのではと思います。

 まずは「国語」。現行では「国語総合」「国語表現」「現代文A」「現代文B」「古典A」「古典B」の科目があります。それが「現代の国語」「言語文化」「倫理国語」「文学国語」「国語表現」「古典研究」に再編されます。

 「地理歴史」分野では、これまで「世界史」が必修で、「日本史」と「地理」はどちらかを必ず選択することになっていました。それが、世界史と日本史を総合的に学ぶ「歴史総合」、環境問題など地球規模の課題を考える「地理総合」が新たに設けられ、両方とも必修科目になります。よりくわしく歴史や地理を学びたい場合には選択科目の「地理探究」「日本史探究」「世界史探究」を履修します。

 「公民」分野には、これまで「現代社会」「倫理」「政治・経済」の科目がありました。新指導要綱では、主権者としての知識や思考力、判断力を育むのをめざす「公共」が必修科目として新たに設けられます。「倫理」と「政治・経済」は選択科目になります。

 また、高度情報化社会に対応すべく、新学習指導要領では、小、中、高すべてでプログラミング教育が強化されます。小学校では、プログラミング教育を必修化。中学校では技術・家庭科(技術分野)においてプログラミングに関する内容を充実させます。高校では情報科において共通必履修科目「情報Ⅰ」を新設。すべての生徒がプログラミング、ネットワークやデータベースの基礎を学習することになりました。

心配される教員の負担増加。対策は急務

 これだけ科目が変われば、現場の教員は、教材やカリキュラムなど授業のすべてを見直さなくてはなりません。また、何を教えるかだけでなく、どう教えるかの面でも教員の負担は増えます。授業内容に相応の工夫が必要になり、労働時間増加が心配されるのです。

 新学習指導要領では、カリキュラム・マネジメントの方策として「学校教育の効果を常に検証して改善する」「教師が連携し、複数の教科等の連携を図りながら授業をつくる」「地域と連携し、よりよい学校教育を目指す」といったことも挙げています。どれも教育の質を高めるのに意味がありますが、労働時間は今以上に増加しかねません。

 現状でも、教員の長時間労働は問題視されています。文部科学省も事態を非常に重く見ており、2019年1月には同省中央教育審議会が「学校の働き方改革」に関する答申を行い、勤務時間管理に関するガイドラインを示しています。

 もちろん、政府も新学習指導要領の実施に際して、教員の負担が増えるのを見込んでいます。その対策例として、公立小中学校の教職員定数を3800人増やすよう、2018年度予算を計上しています。しかし、こうした取り組みだけでは教員の負担は軽減しきれません。「通常の業務をやりながら、近い将来、業務のやり方を根本的に見直せ」。それに近いことが教員に求められているのです。

 こうした事態に対応するには、業務の大幅な見直しが必要です。そのポイントが、ICTの活用でしょう。タブレットを導入して授業のサポートや成績のデータ管理などを行う、校内や保護者の情報共有をシステム化するといった、様々な学校向けのソリューションが提供されています。こうしたソリューションを利用すれば、授業から校務まで、教員が行う業務を幅広い領域でカバーできます。

 もちろん、新学習指導要綱の実施を控える中、今後、ICTの活用を推進しようとすれば、やり方によっては教員の業務負荷が増えかねません。そうならないためには、教育分野へのICT導入実績が豊富で、導入後のICTの運用に関しても学校側の負担軽減ができるベンダーを慎重に選択する必要があるでしょう。

 2020年度から始まる新学習指導要領の全面実施。その大波を、現在の働き方で乗り切るのは非常に危険です。これを機会にICT導入を見すえ、効率化のやり方を見直さないと、この大波は乗り切れません。学校運営者の積極的な取り組みが求められるといえるでしょう。

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山本 貴也

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