自分が実際に経験した出来事から、学びを抽出する行動を「経験学習」と呼びます。アメリカの組織行動学者デイビッド・コルブ氏は、経験学習の行動プロセスを4つの段階にわけて説明する理論「経験学習モデル」を発表。現在では、その理論をベースにした人材育成方法の研究や発表が行われています。
人材育成面において経験学習モデルは、経験の浅い若手社員が自ら問題を解決する「状況適応能力」を身につけられるという点で注目されています。
本記事では、若手社員が経験学習モデルを実践する際の具体的な方法の説明とともに、上司が実践すべき3つのポイントを紹介します。
4つのプロセスからなる経験学習モデル
コルブ氏の経験学習モデルのプロセスは、「経験→省察→概念化→実践」という4つの段階で構成されています。活動を行い、物事を視覚・聴覚・感情などによって感知し(経験)、その感知したことを深く振り返り(省察)、その振り返りで出てきた「学び」をもとに教訓やその概括的な意味をつかみ(概念化)、さらにその本質を新しい状況に応用する(実践)というプロセスです。
漠然と活動を行うのではなく、経験学習モデルを意識的に実践することによって、1つ1つの感知(経験)から教訓を抽出できるようになり、次の活動で教訓を応用することが可能となります。
この「経験」は、成功・失敗のどちらでも大丈夫です。たとえば、新規クライアントに営業へ出かけ、失敗に終わったとします。この失敗経験をもとに、なぜ失敗したかを振り返り(省察)ます。失敗要因から抽出できる教訓やルールなどを概念化し、次の新規クライアントへの営業で成功につなげるために実践するのです。これを繰り返していくと、さまざまな状況での学びが、教訓として自分の中に蓄積されていきます。そして状況に応じた対処法を、教訓の中からピックアップして応用・実践できるようになっていくのです。
このプロセスにおいて、より効果的な学習を実現するため、上司が実践すべき3つのポイントがあります。
上司は経験の場を用意し、一緒に振り返りを
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