【特別企画】スペシャルインタビュー「あの有名人が語る!」(第10回)

藤原和博氏に聞く、100万人に1人の人材を育てる方法

posted by 小池 晃臣

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 元リクルートのトップセールスマンでありながら、47歳で教育界へと転身した人物といえば藤原和博氏である。杉並区立和田中学校の校長を5年間務め、現在は奈良市立一条高等学校の校長を務めている“ビジネスマン兼教育者”だ。

 前編では、これからの時代に求められる考え方について、素早く正解にたどり着く「正解主義」ではなく、自分自身の知識・技術・経験を組み合わせて、その時々の状況の中で最も納得できる解を導き出す「修正主義」に基づいた行動が求められることを詳しく紹介した。

 後編は、これからの社会に求められる会社組織の在り方や、藤原氏が提唱する、ビジネスパーソンが自身のキャリアの希少性を高める「三角形モデル」というアプローチについて迫った。

そもそも「マネジメント」=「管理すること」が時代に合わなくなっている

──前編では藤原さんが教育現場で行っている取り組みについて伺いましたが、後半はビジネスに関する話を聞かせてください。たとえばビジネスの現場で、これから会社組織に求められるものは何だと考えていますか。

 一言で言うと「ダイバーシティ」(多様性)です。

 20世紀は「成長社会」でしたが、21世紀は「成熟社会」へと変わったことで、かつて重んじられていた情報処理力よりも情報編集力が求められる社会に変わりました。みんな同じやり方、考え方でひとつつの正解を一緒に実行していく時代から、それぞれが異なる手法や考え方を持ち、正解ではなく「納得解」(周囲が納得できる解決策)を皆で「共同的に」編み出していく時代となったのです。

 そんな時代の変化を読み取れずに、いつまでも「みんな一緒」というやり方を引きずっている企業も多く見受けられますが、そうした企業は既に利益を出すことが難しくなっています。これに対し、「それぞれ一人ひとりが異なって当たり前」というダイバーシティを重んじる企業は、イノベーションを起こして大きくビジネスを伸ばしているのです。

 そもそも正解のない、修正主義の今の成熟社会には「管理すること」というもの自体が馴染まないかもしれません。

 たとえば多くの会社では、上司は「管理する人」、部下は「管理される人」、という一方的な図式ができあがっているでしょう。20世紀であれば、「とにかく自分が皆を引っ張っていかねば」と考える部長や課長が部下をリードすることで、組織は強みを発揮できました。

 しかし、それでは組織として成果を出せなくなってきています。いまの成熟社会では、上司であろうと部下であろうと、その時々の状況で最も納得できる「解」を導き出すことが強く求められています。

「アルバイト時給8百円」「コンサルタント時給8万円」の差はどこにある?

──企業においても、より個人の力が重要になるということですね

 そのとおりです。そういう意味では、私がかつて所属したリクルートという会社は、まだ日本が成長社会であった時代から「個人」を握ろうとしていた会社であったと言えるでしょうね。

 リクルートでは、たとえば20世紀から21世紀にかけて、それぞれの上司を通さずとも社内での引き抜きを可能にするシステムをイントラネット上に構築しました。こうして組織の事情に邪魔されることなく、個人のやる気やポテンシャルを最大限に引き出せるようにしたわけです。

 ITをうまく活用してこのようなシステムを構築すると、やがて社内は「人材マーケット」と化してきます。すると、男性か女性か、どこの大学出身か、はたまた都市出身か田舎出身かなんていう表層的な要素はどんどんと薄くなっていきます。一方で、社員それぞれの本質的な「個人の市場価値」が問われるようになってくるのです。

──「個人の市場価値」とは、具体的にはどのようなことを表すのでしょうか

 個人の市場価値については、働くことの対価、つまり収入について考えてみるとわかりやすいでしょう。

 一般的なサラリーマンの年収を労働時間で割ると、概ね2000円から5000円の間に落ち着くはずです。これに対し、通常の店舗などでのアルバイトが時給800円ぐらいで、専門の庭師や大工だと10,000円ぐらい、医師や弁護士が30,000円程度、そしてシニアコンサルタントのような人々は時給80,000円にも及ぶでしょう。つまり、労働の対価に100倍もの開きがあるわけです。

 では、この800円から80,000円の差を生み出している鍵は何でしょうか。

 つまり異なっているのは、仕事の苦労の度合いだとか技術の有無とかではなく、希少性があるかないかなのです。誰かに取り替えられることのできない仕事であるほど、市場価値が高まるわけです。

 ここに気づくことができれば、サラリーマンもまた、社外・社内を問わずに自身の市場価値を高めるために、皆と同じように進むのではなく、少しでも他人とは違う方向へと向かうようになるはずです。そして、そんな社員が増えることで、組織にもダイバーシティが浸透し、その結果、競争力が備わっていくようになっていくのです。

“100万人に1人”の希少性を手に入れる「三角形モデル」とは

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