2018.2.5 (Mon)

朝礼ネタ帳(第124回)

経営危機は「ハインリッヒの法則」で未然に防げる

posted by あさき みえ

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 「ハインリッヒの法則」というものをご存知でしょうか。これは、アメリカの損保会社で技術・調査部の副部長をしていたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが見つけ出した、労働災害の経験則です。

 ハインリッヒ氏が、ある工場で発生した数千件の労働災害を統計学的に調査した結果、「1つの重大事故の背後には、29の軽微な事故があり、その背景には300の異常(ヒヤリハット)が存在する」という法則を発見しました。この法則から、重大事故を防ぐには軽微、ヒヤリハットの段階で対処することが、適切な防止策につながる、という経験則が生まれたのです。

 このハインリッヒの法則は、企業の危機管理に適応できます。その導入方法を見ていきましょう。

ベネッセの個人情報流出はハインリッヒの法則で防げた

 2014年6月、ベネッセの会員から「ベネッセとは関係のない企業からDMが届いた」と問い合わせがあったことをきっかけに、ベネッセ会員の個人情報が2,900万件も外部に流出していたことが発覚しました。社内調査の結果、個人情報の管理を委託していた下請け業者に勤務する男性が、会社のパソコンに入っている個人情報を個人用のスマートフォンを使って持ち出し、そのデータを名簿業者に転売していたことが明らかになりました。

 その後、ベネッセは副会長と最高情報管理責任者が引責辞任、会員へのお詫びとして図書カードなどを送り、136億円の特別損失を出す結果となりました。また、世間からは「情報漏えい企業」とのレッテルを貼られ、会員数も減少し、さらに売上減に拍車をかける事態となりました。

 この事件にハインリッヒの法則を当てはめてみると、「会員の個人情報が漏えいした」という重大事故の背景には、以下のような問題があったと考えられます。

・個人情報の管理を外部の業者に委託していた
・実際に管理していたのはその下請け業者だった
・個人情報が入っているパソコンがある部屋に誰でも入れた
・個人のスマートフォンを現場に持ち込むことができていた
・個人のスマートフォンを業務用のパソコンに接続できた
・個人のスマートフォンに業務用パソコンの中にあるデータを移行できた
・一連の作業時に、注意する人がいなかった

 ベネッセがこれらの問題について事前に何らかの策を講じていれば、大きな不祥事を起こさずに済んだかもしれません。ヒヤリハットを防ぐことは、重大事故を防ぐための第一歩なのです。

危機管理に欠かせない「3R」とは

 それでは、企業が日頃から危機管理対策を行うには、具体的に何をすればよいのでしょうか?

 世界的なコンサルティング会社のデロイトトーマツによれば、危機管理対策には「Readiness(準備態勢)」「Response(対処)」「Recovery(回復)」の3つの「R」が重要であるといいます。

 「Readiness(準備態勢)」とは、危機が起きることを見越してそれに備えることです。危機が起きた時の具体的な対処方法を検討したり、体制やガイドラインの整備をしたり、シミュレーション型のトレーニングをしておくことが該当します。

 「Response(対処)」とは、危機が発生した時に被害を最小限に食い止めるために、初動から事態の鎮静化まで迅速に対処することです。

 「Recovery(回復)」とは、事態が鎮静した後に信頼回復を行い、再発防止するための対策を講じることです。

 デトロイトトーマツによると、まずは経営陣など企業のトップは、「不正は許さない」「小さなミスを防ぐ」という姿勢を、1つ目のRである準備態勢のトレーニングや社内教育で、従業員の感心度を高めることが、危機の発見・予防の一歩になるとしています。

 もちろん、どんなに危機管理を徹底していても、ミスやヒヤリハットがまったく起きない企業はありません。重要なことは、ミスやヒヤリハットが小さなうちに、それらが起きた事実を社内で共有し、ミスがなぜ起きたのか、今後どう防ぐのかについて、日頃からシミュレーションを重ね、社員全員が当事者意識を持っておくことが大切です。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年1月22日)のものです。

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あさき みえ

あさき みえ

法学部を卒業後、貿易事務、購買事務などの事務職を経て「法律系ライター」として独立。以来、ビジネス実務法務検定2級の資格や社労士・行政書士の受験で得た知識を活かして、さまざまな分野の法律系コンテンツ記事執筆や法律事務所のウェブコンテンツ制作などを手がける。経営系・人事労務系といったジャンルの執筆も得意。徹底的にリサーチを重ね、客観的データやエビデンスに基づいた執筆スタイルに定評がある。

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