2017.11.21 (Tue)

朝礼ネタ帳(第115回)

「病は気から」の科学解明で、突然死の予測が可能に

posted by 平島 聡子

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 「病は気から」ということわざは、古くから使われてきました。心配ごとや不愉快なことがあると、体調が悪化したり病気になりやすくなるので、精神面も健やかでなければという教えです。

 ことわざの「気」にあたるストレスが、臓器の機能低下や突然死といったさまざまな病気に繋がるという因果関係を立証するための分子メカニズムは、これまで不明でした。しかし先日、そのメカニズムを、世界で初めて、科学的に解明した研究結果が発表されています。その研究では、動物実験で解明されたメカニズムは、人の臓器の機能低下や突然死を予測できる可能性を指摘しています。

ストレスによって免疫細胞が自分の神経細胞を攻撃

 慢性的なストレスが病気の発症に繋がる科学的な仕組みを解明したのは、北海道大学遺伝子病制御研究所の村上正晃教授をはじめとする研究グループです。

 実験では、睡眠障害を誘導する特殊なケージでマウスを飼育し、睡眠不足などの慢性的なストレスを与えました。マウスの脳内に、自分の神経細胞を攻撃してしまう病原性の免疫細胞を入れたところ、約7割が1週間ほどで突然死するという結果になったそうです。

 突然死したマウスを調べると、ストレスで神経が活性化されることにより、脳内で特定の血管に病原性の免疫細胞が侵入し、わずかな炎症を起していました。この脳の炎症が、通常は存在しない神経回路をつくるようになり、それによって胃や腸、心臓などといった臓器の炎症や機能低下が起こり、突然死が引き起こされていたそうです。

 人間も慢性的なストレスによって、臓器障害などが起こるということは、経験から知られています。しかし、その分子メカニズムはほとんど明らかになっていませんでした。今回のマウス実験で解明された分子メカニズムが、人間でも同様ならば、臓器障害や突然死の可能性を事前に察知できるかもしれないと、研究では報告しています。

突然死は予測可能となるのか?

 しかし人は、同じ職場環境で同じようなストレスを受けても、病気になってしまう人とならない人がいます。この差はどこから来るのでしょうか。これまでは「精神的に弱いから」「性格が悲観的だから」などの精神論で括られてしまうことが多かったかと思います。

 しかし今回の実験の報告によると、ストレス性の病気へのかかりやすさや、突然死の危険性も、科学的に分析できる可能性があるそうです。実験でマウスが突然死したのは、体内に病原性の免疫細胞があり、かつ慢性的なストレスを受けるという2つの条件が揃うことで脳内に炎症が起きた時でした。研究では片方の条件だけでは、突然死は発生しなかったそうです。

 このことから、同じストレスを受けても病気になるかどうかの差が出るのは、自分の神経細胞を攻撃してしまう免疫細胞の有無や、脳内の炎症の有無によるものと研究グループは推測しています。

 そこで研究グループは、免疫細胞の量を血液検査や、脳内の炎症の検査を行うことで、突然死やストレス性疾患の発症を予測できる可能性があるとしています。

「病は気から」を改めて意識すると

 北海道大学遺伝子病制御研究所の実験によって、ストレスが命に関わる病気に繋がるということが科学的に明らかになりました。

 たとえば、忙しいビジネスパーソンの日常生活では、睡眠不足などの強い痛みを伴わない慢性的なストレスもあります。そのため自分では気づかないうちに、脳へストレスを与えているかもしれません。今回の実験を踏まえて、自分がどのようなストレスを抱えているのかを、改めて棚卸しをするような気持ちで、ひとつひとつに向き合ってみることが、健康上のトラブルを避けるためには必要なのではないでしょうか。

【関連記事】
http://www.hokudai.ac.jp/news/170816_pr.pdf
https://elifesciences.org/articles/25517

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平島 聡子

平島 聡子

ヨーロッパ在住ビジネスライター。大企業・ベンチャー双方での就業経験や海外でのビジネス経験を活かし、経営や働き方に焦点を当てたコラムやインタビュー記事の執筆を手掛ける。

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