2017.3.22 (Wed)

朝礼ネタ帳(第81回)

唐朝の皇帝から優れたリーダー論を学ぶ

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 中国の古典「貞観政要」(じょうがんせいよう)は、300年続いた唐朝の基礎を築いた第2代皇帝・李世民(りせいみん)と、臣下の政治に関するやり取りから、政権運営におけるリーダーの心得などが書かれている。本書は源頼朝や北条政子、徳川家康、明治天皇が愛読しており、優れたリーダー論が書かれている書物と考える人は多い。ここでは、「貞観政要」に書かれたリーダー論について考える。

部下が率直な意見を言えない理由

 社員の声を経営に取り入れようと努力する企業は多いが、苦労しているという話をよく耳にする。理由のひとつとして、社長や上司に遠慮し、部下は率直な意見を言えないということが挙げられる。

 また、部下に率直な意見を言わせておきながら、上司が受け入れない、逆に説教するなどいうことが起きることも。このような環境では、多くの部下は口を閉ざしてしまうだろう。

 「貞観政要」の李世民が皇帝に即位する前、西暦600年代以前の中国は、絶対権力を持った皇帝が国を支配している時代だった。現代社会に例えるなら、社長がワンマン経営をして、自分は無駄な経費を使いつつ、社員には厳しいノルマを課しているような状況だ。そのような企業は社員の気持ちが離れ、生産性は下がり、経営が悪化し、やがては倒産へと追い込まれていく。

“イエスマン”社員は1000年前から否定されていた!

 「貞観政要」で李世民は、国家を安定させるには臣下に意見を請い、意見を取り入れ、実行するのが重要と説いている。君主が絶対的権力を有していた時代に、臣下の意見を取り入れ、実践したのだ。多様性を重視した李世民の政策は、約300年続いた唐朝の国家基礎を築くに至り、国民から高い支持を得ることになった。

 また李世民は、臣下から意見が出てこないと「君は従順に肯定するだけで、私の政策を正す意見がない。私の政策は完璧でなく、間違いもある。それを指摘しないことは、職務放棄と同じだ。私の政策に間違いがあれば、必ず正すことが君の職務だ」と諭した。

 現代企業でも、自分の言うことに従順な“イエスマン”を欲する上司は少なくない。しかし、それではダメだ、と李世民は1000年以上も前から考えていたのだ。

意見を求める際に必要な動機付け

 上司である自分に対して、意見してくれることを期待して任命した部下であっても、なかなか意見を言いづらいものだ。今も昔も上司へ意見することは、部下にとっては非常に難しい仕事といえよう。

 その点でも李世民は、部下の意見を促すための動機付けを怠らなかった。

 李世民は、「私1人で国家全体を取り仕切りことに無理がある。だから私の耳や目、手足の役割を果たしてもらいたい」と、臣下を頼りにしていることを、まず伝えた。続いて「個人の力だけで、広大な国を治めることは不可能だ。我々は意思の共同体となって国を治めよう」と協力を仰ぐ。さらに「私が間違ったことをしていると思ったら、躊躇せず意見を述べてほしい」と依頼し、最後に「相互不信を抱き、心の中を明かさないことが、国家を治める上で最大の障害になる」と、意見を求める動機を説明した。結果、臣下は意見をする責任の重さと、その責任を果たさない場合に取り返しのつかない失敗が起こることを理解するようになった。

部下が意見を出せる環境は上司が作る

 そこまで言っても、意見が次々と出るようにはならない。臣下から見れば、君主はそれだけ圧倒的な存在なのである。特に李世民の容姿は威厳に満ちており、圧倒されてしまう臣下がほとんどだった。それを理解していた李世民は、部下が意見を言う時は、必ず表情を和らげてから、話を聞く姿勢をとったのだ。

 部下の意見を聞きたいならば、まず「意見を言っても大丈夫」と受け入れる態度を示す必要がある。そこまですることで、ようやく部下の意見が出てくるのだ。

 貞観政要が優れたリーダー論を説いた書物とされる理由のひとつは、理論だけでなく、このようなリーダーの姿勢や心得を説いたところにある。

参考文献
「貞観政要」(明徳出版社刊、原田種成著)
「新釈漢文大系 95」(明治書院刊、原田種成著)
「新釈漢文大系 96」(明治書院刊、原田種成著)

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