2017.2.15 (Wed)

朝礼ネタ帳(第76回)

青学大・原監督が目指す「優秀な駒」がいないチーム

posted by 松木 陽平/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷

 今年の1月3日に第93回箱根駅伝で総合優勝を飾り、3年連続の3連覇を達成した青山学院大学の駅伝チーム。出雲全日本大学選抜駅伝、全日本大学駅伝も優勝しており、史上4校目となる大学駅伝3冠も達成するという華々しい結果を残しました。

 もともと弱小チームであった青山学院大学をここまで成長させてきたのは、今や有名人となった原晋(はらすすむ)監督です。同監督は中国電力で営業を行っていた経歴を活かし、チームマネジメントを行っていることで知られますが、具体的にはいったいどのように組織を強くしているのでしょうか?

優秀でも指示や命令に従うだけのチームは危険

 青山学院大学は、2015年からの箱根駅伝3連覇などにより、最強の駅伝チームを抱える大学として急速に注目度が上がりました。しかし現在の実力と名声は一朝一夕にできたものではありません。

 まず原監督の考え方として、監督からの指示や命令に従うだけの「優秀な駒」のような選手を育てても、優秀なチームにはならないというものがあります。

 なるべく時間をかけずに強いチームを作りたければ、「優秀な駒」となる選手たちに命令を出して練習させるのが早いように思えます。しかし、優秀な監督が指示している間は強いものの、監督が去ってしまえばあっという間に弱体化してしまうという例が、スポーツ界では多々あります。監督の言いなりで動いていただけの選手は、本当の意味では成長できていないのです。

 これを企業に置き換えれば、売り上げは良くてもワンマン上司だけで持っている危うい部署です。言われた通りにしか動いてこなかった社員は、現場が変われば通用しないということになります。

自分で考える癖から始まるチーム力強化

 原監督は、学生たちが自分で考えて行動する選手へと育つように、まずは選手たちの理想像として、「相談する選手」を掲げました。何かトラブルが起きた時でも、「じゃあ、こうしろ」と監督が指示を出すのではなく、「それで、どうしたいの?」と選手に質問を投げかけることで、少しずつ選手たちが自分で考える癖をつけさせました。

 この指導法で一番必要になるのは忍耐力です。監督から見れば答えが分かりきっていることでも、選手は考えることに慣れていないので、はじめは答えを出すまでに時間がかかったといいます。しかし原監督は、考えるヒントや材料は与えても、選手が答えを見つけるまで待ち続けたといいます。

 こうしてゆっくりと時間をかけて選手の体質を変えていくことで、選手は少しずつ「自分はこうしたい」という考え(答え)を持って、監督の意見を聞きにくるようになりました。原監督はチームの意識改革に成功したのです。

 「相談する選手」になれば、少しずつ自分で考える癖がつきます。監督から言われた練習のスケジュールをこなすだけの選手から、その日の天候や自分の体調などを考慮して「どんな練習が今の自分に必要なのか」ということを考え、監督に自分の意見を伝えられるようになっていきます。

 こうした行動ができるようになれば、言われたとおりに動く優秀な駒と同じメニューの練習をしていようとも、目標達成率では大きな差がつきます。また、自ら考えてとった行動で成果が出れば、選手自身のモチベーション向上にもつながり、もっと自分で色々考えようという好循環も生まれます。

「半歩先」の目標達成の積み重ねで意識が変わる

 原監督の指導方法のもうひとつの特徴として挙げられるのが目標管理です。

 原監督は、自身が営業マンをとして働いていた中国電力のQC活動(少人数のグループを作り自発的に改善を行う活動)を、選手の育成に取り入れました。QC活動に倣い、選手たちはグループ単位に分かれて、競技面と生活面の両方で具体的な目標を考える「目標管理ミーティング」を1カ月ごとに開いています。

 このミーティングで原監督が大切にしているのは、妄想ではなくもう少し頑張れば手の届く「半歩先」の目標を見つけることです。少し先の目標を達成し成功体験をさせて、また次の目標を立てて……と繰り返すほうが、大きな目標を立てたがそのために何の練習に着手すればいいか分からなくなるより、結果的に大きな成果を残せる、と原監督は考えているからです。

 組織が何か大きな目標を立てるのは悪いことではありません。しかし個々の社員に「売り上げ向上のために頑張ろう」という全社向けの指示とは別に、社員が自分ひとりでも達成できる小さな目標を設定することが効果的です。なぜなら大きな目標では、個々の頑張りどころが目標に貢献しているかが判断できないまま、空回りして終わってしまうという悪循環に陥りがちだからです。

 また、ミーティングを行う際は、メンバーをランダムに選んでいるといいます。これは、先輩・後輩や、レギュラー・控え、故障中などさまざまな状況の選手でグループを作ることで、チームが分断されずに結束力を持てるというメリットに加え、さまざまな立場のメンバーから出た多様な意見を参考に、より客観的に自分の目標を設定するという狙いもあるといいます。

 こうして現実的で具体的な目標を設定することで、自分がどんな練習をすればいいかがはっきりします。つまり、この目標設定ミーティングも監督からの指示をぼんやり待つのではなく、自分で考える選手となることにつながっていたのです。

 リーダーがワンマンでチームを率いるのではなく、ひとりひとりが目標を設定し行動できる企業になれば、人事異動や退職などで競争力が低下することなく、世代交代しても実力の変わらぬ企業として成長し続けることが期待できます。

 原監督は、自分が理想とする監督像を「自分で設定した目標を、自分で考えた練習で達成する。監督はそれを見守るだけの存在」と語っています。この姿勢は、企業におけるビジネスリーダーとしても、理想的な姿といえるでしょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷

連載記事一覧

松木 陽平/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

広告代理店にて、大小問わずさまざまな企業のイベント制作・プロモーションなどに携わってきた経験を持つ。現在はフリーライターとして、企業の広告代理店にて、大小問わずさまざまな企業のイベント制作・プロモーションなどに携わってきた経験を持つ。現在はフリーライターとして、企業の採用などに関する制作・ライティングを中心に、健康管理からカルチャー関連まで幅広い記事を手掛ける。採用などに関する制作・ライティングを中心に、健康管理からカルチャー関連まで幅広い記事を手掛ける。

メルマガ登録


スペシャルインタビュー


成功企業の戦略

ページトップへ